「なんだべカイリ、知り合いか?」
キョトンとする男性に、カイリちゃんは渋々といった感じで頷く。
「……まぁ、知り合いと言えば知り合いだけど。その紫髪は風花さんの娘なんだってさ」
「おお! そかそか風花さんの! 通りでよく似ているべ!」
私を指差したカイリちゃんを見て、男性は嬉しそうに破顔した。
「風花さんには本当にいつもお世話になっているべ。まさかその娘さんがカイリと仲良くなっていたなんて! いやー良かったべなカイリ、話せる子が出来て」
「違っ! そいつはそんなんじゃっ……!!」
否定しながらもニコニコと笑う男性には強く言えないのか、カイリちゃんは困った顔をして口籠る。
ていうかこの男性。さっきのカイリちゃんの言葉通りなら、もしかしなくても……。
「ああ申し遅れたべ。オラはカイリの父で、この辺の海で漁師をしている者だべ」
「あ、ご丁寧に。雪守まふゆです」
「俺は九条神琴と申します」
深々と頭を下げられて、私達も慌てて順番に名乗る。そして心の中で「やっぱり」と呟いた。
この人がカイリちゃんのお父さん。
ということは、人魚の女性と結婚した……。
「ん? 九条……神琴……?」
「?」
と、そこで不意にカイリちゃんのお父さんが、九条くんをジッと見つめて首を捻った。
その様子に私達も首を捻る。
「あの……、俺に何か?」
顎に手を当てて考え込むような仕草に九条くんがそう聞けば、カイリちゃんのお父さんは苦笑して首を横に振った。
「いんや。なんでもないんだべが、ただおまいさんの顔、どっかで見た気がしてなぁ……」
「え……」
その言葉に驚き顔を見合わせる私達に対し、カイリちゃんは呆れたように息を吐いた。
「はぁ? こんな目立つイケメンが、こんなど田舎を何度も闊歩してる訳ないじゃん。それよか父さん、さっさと魚卸しに行くよ」
「おーそうだべ。じゃあみなさん、オラ達はこれで失礼するだ」
「あ、はい。こちらこそお仕事中に引き留めてしまって……」
