雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 ◇


「あー、右、もうちょい右!」

「逸れた! 左に行って!」


 私達の声を頼りに、目隠しをした雨美くんが真っすぐ棒を持って砂浜を歩く。
 やはり目を隠すと平衡感覚が失われるのか、あっちへふらふら、こっちへふらふら。スイカからは遠ざかるばかりである。

 するとそれに痺れを切らせた夜鳥くんが雨美くんに向かって叫んだ。


「だからそっちじゃねぇって、水輝! 男ならもっと真っ直ぐ歩けよな!!」

「はぁ!? 誰か女みたいだってぇ!?」

「いや、そこまで言ってねーし!」

「いいや言った!! 少なくともボクの耳にはそう聞こえた!!」


 夜鳥くんのゲキに、雨美くんが棒を振り回して激昂する。
 あら? なんだか雲行きが怪しくなってきた。まだ二人は言った言わないで争っている。


「ちょ、ちょっと二人とも! こんな時までケンカは……」

「もぉーいいっ!! ボクは自分でスイカの位置を特定するから、みんなは指示しないでっ!!」

「ちょっ!?」


 取り成そうとする私の声を遮って、雨美くんが叫んだ。
 そして私達の声など聞かず、棒をある一点に定めて前進する。

 しかしゆっくりと近づくその先にあるのは、スイカではなく――……。


「へあっ!? あああ雨美くん!? こっちじゃないです!! この先にはスイカじゃなくて、僕の頭がぁーーっっ!!!」


 そう! 雨美くんが歩く先にあるのはスイカではなく、木綿先生!
 未だサンドアート状態に土で固められた先生が必死で叫ぶが、しかしそれでも雨美くんは止まらず、ニヤリと口の端をつり上げた。


「ふふふ、もうボクは誰の声にも惑わされたりはしない!! 覚悟しろっ、スイカっ!!!」

「あーーーーっ!!?」

「せ、先生ぇーーーーっ!!」


 万事休す。木綿先生が絶叫した瞬間、私達が雨美くんを止める間もなく、瞬く間に一反木綿(いったんもめん)へと姿を変えた先生が砂の中から勢いよく飛び出した。


 スポーーーーンッ!!


「あっ! スイカがっ!!」


 しかもその際、木綿先生が放った風の妖力によって砂浜に砂嵐が巻き起こり、スイカがどこか遠くへと飛ばされてしまう。


「あ゛ーーっ!? おいっ! 木綿に水輝!! お前ら何やってんだよ!?」

「雷護がボクのこと怒らせるからでしょー!」

「僕だって命が惜しいんですぅー!」

「もうっ、話はあと! それより早くスイカを追いかけよう!!」


 言い合う三人にそう叫んで、私達は飛んで行ったスイカを追いかける。


「まふゆ、あそこ!」

「あっ!」


 バタバタと走って九条くんが指で示した先。

 たどり着いたのは以前も来た釣り場で、岩壁に着岸させた一艘(いっそう)の釣り船の傍らに立つ麦わら帽子の男性が、スイカを持って首を捻っているのが見えた。