『どうやら随分と病の進行が早いようだ。そなたの妖力でなんとか凌いでおるが、これはアイツの時以上か』
『私の友人は……。〝紫蘭〟は、今は――……』
皇帝陛下のあの言葉。
アイツの時以上。
陛下の言う〝アイツ〟が恐らく紫蘭さんという名前なんだろう。
ということは、九条くんはその紫蘭さんという人よりも――。
「……まふゆ?」
「!」
九条くんに名前を呼ばれて、ハタと我に返る。
いけない、またぼんやりしてしまった!
「あ、ごめっ……!」
そして慌てて顔を上げた瞬間……。
「~~~~っ!!」
また私は声にならない悲鳴を上げた。
――近いっ!! さっきよりも更に近いっ!!
先ほどまで閉じていた九条くんの瞳は開かれて、琥珀色に煌めく金の瞳が間近で私を捉えている。
それだけでももう倒れそうなのに、更に九条くんの背中に置かれたままの私の手。
その手から伝わる、常とは違う滑らかな手触りの意味するところは……!?
ぎゃあああ!!! わっ……私、ずっと九条くんの裸の背中をさすってた!? いや、いやいやいや! 無意識だし! 無意識だったからっ!! 九条くんを助けたい一心であって、決して! 決っっして、やましい気持ちだった訳じゃ……っ!!
――て、やましいって、何考えてんの私!!?
「ごっ、ごごご、ごめんっっ!!!」
もはや内心大パニックで、背中から手を離して叫ぶ。
そしてなるべく九条くんから距離を取ろうと、小さなボートの端へと勢いよく後退した時だった。
「ぎゃあっ!!?」
「まふゆ!?」
端に寄り過ぎて体勢を崩した私の体がぐらりと揺れ、そのまま海へと投げ出されそうになる。
