雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 それは……、なんと解釈すればいいんだろう? やっぱりこの森には何かあるらしい。
 今にして思えば、最初に上空からザンの森を一望したはずの木綿先生が、この入り江の存在を一言も話さなかった。

 いや、話さなかったのではない。
 気がつかなかったのだ(・・・・・・・・・・)

 どういう仕組みかは分からないが、そう考えた方がしっくりくる。
 もしかしたらカイリちゃんの言う姿こそが、本来のザンの森なのだろうか……?

 ――そう、思い至った時だった。


「おーいっ!! 雪守ーー!! 九条様ーー!!」

「!!」


 遠くの方で微かに聞こえた声に、私と九条くんはハッと顔を見合わせる。


「今の声聞いた!?」

「ああ、夜鳥だな!」

「みんなが私達を探しているのかも! 急いで戻らなきゃ!!」


 そうして声の方を目指して駆け出そうとして、私はハッとカイリちゃんを振り返る。
 するとカイリちゃんが小さく手を振って、頷いた。


「よく分かんないけど、アンタら本当に迷子だったんだな。ほら、早く仲間のところへ行きなよ」

「うんっ! ありがとう!」


 それに私も頷き返すが、ふと頭にあることが浮かんで、私はカイリちゃんに尋ねた。


「……そういえばカイリちゃんは、海神(うみがみ)様に会ったことってあるの?」

「はぁ? 海神ぃ? 無いよ。人魚の半妖って言ってもあたしは陸育ちだし、母さん以外の人魚にも会ったことはないから。……それが何?」

「あ、ううん! 別に大したことじゃないんだけど、海神様の姿を見たら〝一つだけなんでも願いが叶う〟って言い伝えがあるらしいの。それでカイリちゃんは会ったことあるのかなぁって、ちょっと思っただけ」

「ふぅん……」


 カイリちゃんが微妙な顔をして呟く。
 とっさに思いついたまま言っちゃったけど、子ども染みた迷信を信じてるヤツと思われたかも知れない。なんか恥ずかしくなってきた……。


「まふゆちゃーん!! 神琴(みこと)様―!!」

「あ」


 今度は朱音ちゃんの声が聞こえる。そうだった、早く戻らないと!


「行くよ、まふゆ!」

「うん! 変なこと聞いてごめんね、カイリちゃん!」

「別にいいよ、じゃあな」


 そんなカイリちゃんの声を最後に、私達は入り江を後にした。

 夜空を彩る美しい満天の星が、また生い茂った森の木々によって覆い隠されていく……。