「じゃあもう話はここまででいいだろ? 立ちっ放しで疲れたし、アンタらもさっさとデートに戻りなよ」
「デッ……!?」
不意打ちにとんでもないことを言われ、またも私の体温が急上昇する。
「違っ……!! デートじゃないからっ!! ただの肝試しだからっっ!!」
「はぁ? さっき来た時、アンタら手ェ繋いでなかった? まぁどうでもいいけど」
「手ッ……は、確かに繋いでたりもしたけど! ほんと違うからっっ!!!」
真っ赤になって叫べば、カイリちゃんがうるさそうに顔を顰めてヒラヒラと手を振った。
「はいはい。分かった、分かった。じゃあそういうことにしといてやるよ。だからさっさと戻れって」
「カイ……っ!」
「まふゆ、そこまでだ」
絶対に分かってないカイリちゃんの態度に、もう一声叫びたかったが、その前に九条くんに遮られてしまう。
「魚住さん、俺達も戻りたいのは山々だが、実は途中で道が分からなくなってしまったんだ。君はさっき一本道だと言っていたが、どこから行けばいいんだい? よければ帰り道を教えてほしい」
「は??」
九条くんの言葉にカイリちゃんが怪訝な声を出して、森の方を指差した。
「教えるも何も、そのでっかい一本道を真っ直ぐ歩けば桟橋に出るだろうが」
「は??」
今度は私達が怪訝な声を出す番だった。
だってカイリちゃんの指を差した先には、当たり前だが一本道ではなく、元来た鬱蒼とした森が広がっているだけなのだから――。
「いやいやいや!! そっちはめっちゃくちゃ複雑で迷路みたいな道なき道だよ!! ここまで来たのも偶然だったんだからっ!!」
「だったら魚住さん、もう一つ教えてほしい。俺達の仲間も一緒に肝試しに来ていたんだが、彼らはここには来たかい?」
神妙な顔をした九条くんの問いかけに、カイリちゃんはあっさりと首を横に振った。
「いいや。ここに現れたのはアンタ達が初めてだよ。今日だけじゃない、過去にもね」
「…………」