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ザーンザーンと岩場に波が打ちつける音が響く入り江。
夜でもティダの気温は高く、カイリちゃんに海水をかけられずぶ濡れだった服は、今やすっかりと乾いていた。
「……まず、さっきアンタが言った通り、あたしは人魚の半妖で間違いないよ」
そう言ってカイリちゃんは先ほどのお墓を仰ぎ見る。その後ろ姿はどこか寂しげだ。
「そっか……ありがとう。ごめんね、無理に聞き出して」
「いいけど。でもよくあたしが半妖だって気づいたよね? 一度だってこのことを誰かに漏らしたことなんて無いのに……」
「えっ!?」
カイリちゃんがこちらを振り返り、訝しげな視線を向けてくる。
それに私は慌てて言い募った。
「そ、それは……! 私の友達も半妖だから……かな!? ほらっ、カイリちゃんも知ってるでしょ!? ピンク色でふわふわな髪をした女の子!」
「ああ、あの。……へぇ。そっか、あのピンク髪も半妖なのか……」
「……」
うう。視線をかわす為とはいえ、思わず朱音ちゃんのことを出してしまった……。ごめんね、朱音ちゃん……。
心の中で平謝りしつつ、しかしそれによってカイリちゃんが納得してくれたようなので、ひとまずホッと胸を撫で下ろす。
「半妖……。そうか、だから気配で気がつかなかったのか。じゃあ君の両親のどちらかが人魚ってことかい?」
「ああ……」
九条くんの質問にカイリちゃんが頷く。
「母さんが人魚で父さんは人間。元々母さんはザンの森に流れ着いた人魚で、たまたまその近くで魚を獲っていた父さんが母さんを見つけたのが始まりらしい。それで二人でこの森に住むようになって、少ししてあたしが生まれた」
「じゃあカイリちゃんは、生まれた時からずっとここに?」
「そう。人魚は陸との交友が無いから、母さんも自分の存在を周囲には気づかれたくないみたいだった。だから人が寄り付かないザンの森に住むのは都合が良かったんだ。半妖のあたしもそれは同じで、子供の頃から父さんの仕事の手伝い以外は全部ここで過ごしてた」
「学校はどうしてたの?」
「行ってない。勉強とか歌とか家事とか……、そういうのは全部母さんに教わったし」
「……優しいお母さんなんだね」
