「ままままさか、夜鳥くん達じゃないよね!? 私達を驚かせる為にリボンを外したとか!?」
「いや、彼らが反対側のルートに向かったのはハッキリと見ていたし、いくらなんでも俺達を先回りをしてリボンを回収したとは思えない」
「そんな……」
じゃあ誰の仕業だって言うんだ!? まさか本当に海……。
「――まふゆ」
「ぎゃああああああっ!!?」
考え事をしている最中にいきなりポンと肩を叩かれ、またも情けない悲鳴を上げてしまう。
慌てて横を見れば、九条くんが驚いたように目を丸くしていた。うう、恥ずかしい。
「ごめん。脅かすつもりは無かったんだけど……」
「う、ううん! 気にしないで! それよりどうしたの?」
「うん。まふゆが聞いた歌声って、どの方角からするかは分かる?」
「…………なんで?」
ものっすごく嫌な予感がするが、一応聞いてみる。すると九条くんは、やはり案の定なことを言い出した。
「この森に俺達以外の誰かがいるなら会ってみたいと思って。だってほら、この森は〝人魚の流れ着く場所〟なんでしょ?」
「く、九条くん。みんなが話してる時は淡々としてたのに、実は気になってたんだ……」
「そりゃあね。俺だって普通じゃお目に掛かれない人魚には興味あるさ。まふゆだってそうだろ?」
「それは……」
確かに無いと言えば噓になる。
でもそれはただの言い伝えで、実際先ほど木綿先生が空から見た時は人魚らしき姿は見なかったと言っていたではないか。
そう私が煮え切らずにブツブツ言うと、九条くんが「それに」と目の前の赤いリボンが結ばれた木を指差した。
「道しるべのリボンがここで途切れている以上、闇雲に歩いても迷子になるだけだよ。そして引き返したところで、森の入り口までリボンが残っている保証も無い。なら人魚かはともかく、誰かと合流出来るならそれに越したことはないと思わない?」
「うぐ」
悔しいが一理ある。私だってこんな不気味な森で遭難なんて絶対に御免である。
「ほら」
「うう……、分かったよ」
目の前に差し出される手に手を重ね、ようやく私は腹をくくった。
「えっと、確か……歌声はこっちからだったと思う」
私は九条くんの手を引いて、一緒に歌声の主のいる場所を辿った。
時々聞こえる歌声は、まるで私を導くように森の奥へ奥へと誘う。
そして、辿り着いたのは――。
