◇
「あれ……?」
「どうしたの?」
「変だな。風花さんが括り付けた筈のリボンがこの木で途切れてる」
「えっ!?」
あれからしばらく歩いて、不気味な森にも少しずつ慣れてきた頃。
木に括り付けられた道しるべの赤いリボンが、ある地点から途切れていることに九条くんが気づき、眉を顰めた。
それに私も驚いて周りの木を見渡すが、確かに目の前の木を最後に赤いリボンがどこにも見当たらない。
「ええええっ!? まさかお母さんってば、途中からリボンを結ぶの忘れたとか……!?」
「いや木綿先生も一緒だったんだし、二人して忘れたとは考え難い。それよりも誰かに外されたと考えた方がしっくりくるような……」
「だ、誰かって、」
一体誰だって言うんだ。
怖いことを言わないでほしい。
すっかり忘れていた恐怖心がまた蘇ってきて、私はぶるりと肩を震わせる。
「――――……」
「……え?」
ハッと九条くんを見上げるが、彼が声を発した様子は無い。
キョロキョロと周囲を見回す私を見て、九条くんが首を傾げた。
「? どうしたの?」
「いや、なんか歌? みたいのが聞こえて……」
「歌? 俺は何も聞こえなかったけど……」
「う、嘘!? けど確かに今、女の人の声で誰かが歌ってたような……!?」
あ、なんか自分で言ってて怖くなってきた。
だっておかしいよ。こんな鬱蒼とした森の中で、一体誰が歌なんて――。
「――――――」
「!! また……っ!!」
「え?」
今度はさっきよりもハッキリと聞こえた歌声に、私はゾッと身を竦ませた。
しかしやっぱり九条くんには歌は聞こえていないのか、震える私を見てキョトンとしている。
一体なんなの、もうっ!!
