雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 ◇


 海に浮かぶ小島であるザンの森へと向かうには、海岸から架かる桟橋(さんばし)が唯一の交通手段である。

 しかしこの桟橋、地元民があまり立ち寄らない場所故か手入れが全くされておらず、割と……いやかなりボロい。
 それこそ無茶をしたらすぐに穴が開いてしまいそうな程に。

 そんな足を置くだけでギシギシと悲鳴を上げる粗末な橋を、私達は縦一列に並んで歩いて行く。


 ――ギシッ!


「!!」


 慎重に歩みを進めているが、それでも朽ちた木特有の鈍い音は歩くと必ず響いてしまう。
 そしてその音が鳴り響く度に、私の背中からはヒヤリと冷や汗が流れた。


「まふゆ、大丈夫? 手を貸そうか?」

「い゛っ、いいっ!! 自分で歩けるし!!」


 前方を歩いていた九条くんが心配げに私を振り返り、手を差し出す。
 しかしそれをとっさに拒否してしまい、私はハッと青ざめた。

 ぎゃああ! せっかく九条くんが心配して言ってくれたのに、何感じ悪く断っちゃってんの私!?
 しかも声まで裏返ってたし、動揺し過ぎだバカ!!


「ご、ごめん! でも本当に自分の力で渡れるから……!」

「そう?」


 なんとか絞り出すようにして謝れば、対する九条くんは私の先ほどの態度をどうとも思っていないのか、あっさりと差し出した手を引っ込めた。


「~~~~っ」


 それになんとも言えない八つ当たりめいた気持ちが渦巻いたが、拒否をしたのは他ならぬ自分なので文句など言える筈もない。


「はぁ……」


 とにかく気を取り直して早く桟橋を抜けよう。
 そう心に決めて歩みを進めた瞬間、突然視界がガクガクと激しく震え出した――!!
 

「はあ!!?」

「うぉぉっ!! めっちゃギシギシ鳴ってる!! 超オモシレェーーッ!!」

「バカ雷護(らいご)!! ギシギシどころかメキメキ言ってんだけどっ!?」

「きゃあっ!! わざと揺らさないで〜!!」

「ちょっと夜鳥くん!! 朱音ちゃんが怖がってるからやめなさいよ!!」

「あははははーーっ!!」


 私の怒鳴り声などものともせず、夜鳥くんが楽しげに桟橋を揺らす。
 笑い声は無邪気だが、やってる行動は全く可愛くない。

 なにせ桟橋の下は真っ暗な夜の海。一度落ちれば捜索するのは困難である。絶対に落ちたくない!!


「わはははははーーっ!!」

「やめっ……!!」


 こうなったら力づくであの夜鳥(バカ)を止めるしかない!!


 ――そう考えた時、


「夜鳥くん、悪ふざけもそこまでですよ」


 聞き慣れた木綿先生の声と共に、フヨフヨと白くて薄っぺらい布が夜空を浮遊してこちらに飛んで来たのだ。