雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「そうですよぉ、雪守さんっ!! 僕なんて皇帝陛下のご尊顔を拝見し損ねたんですからね!! せめて人魚の顔くらいは拝んで帝都に帰りたいですよ!!」

「あ、先生、まだそれ根に持ってるんだ」


 雨美くんの言葉に、木綿先生が当然と頷く。


「当たり前ですよぉ!! 庶民が陛下を拝見出来る機会なんて、生涯に一度あるか無いかなんですから!! ああっ!! 何故僕はあの時、二日酔いになってしまったんだぁ……っ!!!」

「まぁまぁ、先生」


 身振りを交えて大袈裟に苦悶の表情を浮かべる木綿先生の肩を、お母さんがポンと叩いた。


「そんなに悲観することないわよ。時が巡れば、また会える機会が来るわ」

「?」


 お母さんにしては妙に抽象的な励ましの言葉に、私は首を傾げる。
 ていうか木綿先生があの日二日酔いになったのって、お母さんが先生に大量の泡盛を飲ませたせいだからじゃ……。

 呆れた気持ちで二人を見ていると、不意にお母さんがクルリとこちらを向いて悪戯(いたずら)っぽく笑う。


「さて! じゃあこの後はザンの森で肝試しってことで決まり! じゃあ食事再開! ほら、まふゆ! アンタもビビッてないで覚悟決めな!」

「だから別にビビッてないって!!」


 そうお母さんに叫んで、そのまま視線を私の真向かいに座る人物――九条くんへとチラリと向ける。

 九条くんはいつもの涼しげな表情のまま、みんなと楽しげに笑っていた。


「…………はぁ」


 自覚してしまった自分の気持ち。
 なんだか顔を見るのが気恥ずかしい。

 こんな気持ち、初めてでどうしたらいいのか分からず、私は小さな溜息をひとつ()いた。