「ま、待って!! ねぇ雨美くん、夜鳥くん! あの時釣り人さん達は肝試しよりももっと大切なことを言ってたでしょ! ザンの森を荒らすと、海神様の怒りを買うんだよ!! 肝試しなんてそんな悪ふざけをして、もし何かあったら……っ!!」
「でもそれもただの言い伝えでしょ? 実際に肝試しした人達にその後何かあったりしたの?」
「そ、それは……」
雨美くんの鋭い指摘に私は言葉に詰まる。
た、確かに肝試しをしてから何かあったという話は聞いたことが無い。
やっぱり言い伝えはただの迷信? いや、しかし……。
「ええと、でも……」
「あーん?」
ウロウロと目が泳ぐ私を見て、夜鳥くんが胡乱げな眼差しをこちらに向けた。
「ははーん、なんだよ雪守。もしかしてお前、怖いのか?」
「は……!?」
夜鳥くんのその言葉に私はピタリと体の動きを止め、そして更に叫んだ。
「な、ななな何言ってんのっ!!? 別に怖い訳ないじゃん!! 全然平気だしっ!!!」
ブンブンと首を横に振って否定する私に対し、夜鳥くんがニヤリと口の端をつり上げる。
「だよなぁ? だったら今度はオレの言う事聞けよな。昼間はお前のかき氷早食いに付き合ってやったんだし」
「うぐっ!!」
そこを突かれると痛い。
確かに昼間のコンテストでは、いきなり呼びつけて私が食べ残した大半のかき氷を夜鳥くんに食べてもらったのだ。ルールとはいえ酷い話である。
「で、でもっ!! 地元民としては、神聖な森を遊びに使われるのは抵抗があるっていうか……。 ねっ! お母さんも嫌だよね!?」
「あら、いいんじゃなーい? この際せっかく行くなら、本当に人魚が森に流れ着いてるのか探すのも楽しいかもね?」
「お、お母さーんっ!!」
同意を求める相手を間違えた!! 私は頭を抱えて項垂れる。