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『皇帝陛下が俺達を貴賓室に? しかも俺の病のことやまふゆの正体を見抜いていたなんて……』
『うん、ビックリだよね。詳しいことは何も聞けず終いだったけど、確かに医務室じゃ他にも人は居るだろうし、ここに連れて来てもらってよかったと思うよ』
目覚めてソファから身を起こした九条くんに今の状況を説明する。
すると九条くんは貴賓室をぐるりと見回したのち、何か思案するように黙り込んだ。
『九条くん?』
『……皇族は人間でありながら、妖怪のようにいくつかの〝術〟を使うと言われている。もしかしたら陛下も何か相手の秘めたものを暴く術をお持ちなのかも知れない』
『秘めたものを暴く……?』
どうだろう? 術を使うとかそういった類の動きはあの時陛下はしていなかったように思えるが、単に私が見逃しただけかも知れない。
それにしても人間なのに妖怪顔負けの力を持つとは、やはり皇族が日ノ本の頂点に立つにはそれなりの理由があるんだなぁと思う。
『あ、あとね……』
『ん?』
『……ううん! やっぱなんでもない』
――ただ、
陛下が私の名前を知っていたこと。
陛下に妖狐の友人がいること。
それは九条くんには言わなかった。
理由は自分でも分からない。
でもなんとなく九条くんの反応が怖くて、言えなかったのだ……。
『うわぁぁぁぁぁんっ!! 皇帝陛下を拝見出来るなら、僕だって這ってでも行ったのにぃぃ!!!』
――ちなみに。
案の定、獅子人形を受け取った木綿先生は泣いた。と言っても嬉し泣きではなく、もちろん悔し泣きである。
想像通り皇帝陛下を見逃したことを知った木綿先生は荒れに荒れ、やけ酒を始めた挙句にまたも二日酔いでしばらく寝込んでいた。アホである。
あ、もちろん獅子人形自体は喜んでくれたことは、ちゃんと付け加えておく。
