「あ……」


 すると目の前に立っていたのは、私がこのコンテストに出場するキッカケとなった人物……。


 ――そう、魚住(うおずみ)カイリちゃんだった。


 彼女は小麦色に日焼けした肌に黄色いビキニを着ていて、羨ましいくらいお腹がきゅっと引き締まっている。背が高く、手足もビックリするくらいスラっと長くて、まるでモデルさんみたいだ。


「あはは。ちょっと緊張してるけど、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、カイリちゃん」

「べっ、別にアンタの心配をした訳じゃないから! ただアンタに棄権されたら、勝負がうやむやになって困ると思っただけだし! ……まぁ、元気ならいいけどさ」


 私が笑ってお礼を言えば、カイリちゃんはプイと素気無くそっぽを向く。
 しかしその頬がほんのり赤いことに気づいて、私は朱音ちゃんと顔を見合わせた。

 初めて会った時から薄々感じていたが、カイリちゃんはその乱暴な口調と素っ気ない態度とは裏腹に、実は優しい性格の持ち主なのかも知れない。
 私が彼女の力で吹き飛ばされた時も、私に駆け寄るその表情はとても苦しそうだった。


「…………」


 そう思い至れば、彼女に氷の妖力を持つ妖怪について聞かれた際に嘘をついてしまったことに、今更ながらに罪悪感がジワジワと湧いてくる。

 かと言って私の正体を彼女に明かすのかと言われれば、それはそれで抵抗があるのだが……。

 彼女がどうこうというよりも、幼い頃から正体を隠すことが当たり前になっていたので、自分から正体を明かすという行為に、ものすごく勇気がいるのである。


「――さぁ、場も温まったことだし、いよいよ出場選手を紹介しちゃうわよーー!!」


 と、そこでお母さんの大きな声がステージから聞こえて、ハッとする。

 ヤバっ、もう出番!? あれ? でも……。


「まふゆちゃんとカイリちゃん以外の選手が見当たらないねぇ? みんなお手洗いとか?」


 キョロキョロと朱音ちゃんが周囲を見渡し、それに私も頷く。


「うん。お母さんってば、全員揃ってないの気がついてないのかなぁ?」

「はっ? アンタら知らなかったのか? 出場選手は――……」


 私と朱音ちゃんの会話にカイリちゃんが驚いた声を上げた瞬間、お母さんのマイク越しの大音量が砂浜に響き渡った。


「今回は二名(・・)の選手が出場してくれるわよーーっ!! さぁ二人とも! ステージに上がって来てちょうだい!!」

「――――え?」