皇帝陛下との不思議な邂逅。
それから数日が過ぎた今日この日。
ついに週末を迎え、〝約束の日〟は訪れた……。
「みんなーーっ!! 夏は好きかーーっ!?」
「おおーーっ!!」
「かき氷は好きかーーっ!?」
「おおーーっっ!!」
海をバックにして、砂浜に特別に組み立てられたステージ。その上でやたらとテンションの高い司会に煽られて、観客達も「うおーっ!」だの「いぇーい!」だのと騒がしい。
そしてそんな盛り上がる観客達を尻目に、ステージ下で出番を待つ私のテンションはだだ下がりだった。
何故なら……。
「司会進行はこのわたし、かき氷屋の店主こと雪守風花が務めさせて頂くわ! みんな、よろしくねーーっ!!」
――そう、お母さんが司会をしているのである。
ステージ上でマイク片手に観客を沸かせようと熱弁を奮うお母さんを見ていると、なんとも居た堪れない気持ちになってしまう。
「はぁ……」
「ふふ、すごいね風花さん。司会が板に付いてる」
「全然すごくないよ。娘としてただひたすら恥ずかしいよ」
深い溜息をつくと、横に立つ朱音ちゃんにクスクスと笑われてしまい、更に恥ずかしい。
せっかく私を応援する為にステージ下まで来てくれたのに、辛気臭い顔を見せてしまって申し訳ない限りである。
「だけど風花さんが司会なら、まふゆちゃんも肩の力を抜いてコンテストに臨めるんじゃないかな?」
「え、そう?」
むしろとんでもない無茶振りをされて、私が肩を怒らせる未来しか見えないのだが……。
嫌な想像に顔を顰めながら、私はなるべく観客達を視界に入れないようにして体をジッと縮こませる。
結局水着は最初に朱音ちゃんが選んでくれた、黒のビキニになった。
朱音ちゃんは似合うと褒めてくれたものの、大勢を前にしてこんな心許ない姿を晒すなんて、なんて羞恥プレイなんだ。
忌まわしき文化祭での生徒会ステージの記憶も蘇ってきて、より気が重くなった私はガックリと俯く。
「ちょっとアンタ、大丈夫なの? なんか顔色悪くない?」
「へ……」
と、そこで不意に前方から心配そうな声を掛けられて、私は俯いていた顔を上げた。