「……陛下、またなんというお姿を。どうせ一般人のフリをして、供も付けずにあちこち出歩いていたのでしょう?」
「はははっ! そう嫌そうな顔をするな。冒険は私の趣味だ。せっかく帝都から遥々ティダまで来たのだから、公務だけではつまらないであろう?」
「はぁ……まったく。――それで、その方々はどうされたのです?」
「!!」
陛下の言動にまたも大きな溜息をついた宰相さんは、〝その方々〟と言いながら視線を私とソファで寝ている九条くんへと向ける。
その視線が思いがけず鋭くて、ビクリと私の肩が勝手に跳ねた。
さっき絵だけでも怖そうな人だなって思ったけど、やっぱり生で見ても本当に怖そうだ……。
「こら、そう不躾な視線を向けるな。怯えているではないか。この子らは私が城内を散歩していた時に、偶然具合を悪くしていたから声を掛けたのだ」
「ほぉ? それで医務室に引き渡すのではなく、わざわざこちらへ? それはそれは陛下にしてはお優しいことですが……。まぁいいでしょう」
私の顔をジロジロと見て、宰相さんがそう言う。
えっ! ていうか、本当にちゃんとした医務室があったの!?
だったら尚更なんで私達をここに……。
考え込んでいると、宰相さんが「それはともかく」と懐から懐中時計を取り出して言った。
「先ほども言った通り公務のお時間です。早くご準備をなさってください」
「だが私はまだこの子と話をしたいのだが」
「陛下」
「ヤダ」
「えっと……」
〝この子〟と言って私を見た陛下が、何故かそうやって駄々をこねる。
それに宰相さんがギロリと鋭い視線をこちらに向けた。
顔が怖い。怖すぎる。
どうか私を争いに巻き込まないでほしい……。
