「まぁそう警戒するな。そなたの正体が何者であっても、私はそれを公言するつもりはない。さぁ、とにかくまずは彼の発作を鎮めてあげなさい」
「…………」
そう言われてしまえば、私には何も言うことは出来ない。
まだこの状況に戸惑いは隠せないが、陛下の言う通り今は九条くんの発作を鎮めるのが先決である。
こくりと無言で陛下に頷いた後、ゆっくりとソファへと近づく。
そしてそのまましゃがみ込んで九条くんの様子を伺いながら、私はいつものように氷の妖力を手のひらに込め、そっと彼の額に触れた。
「……っ、…………」
するとみるみる内に額に滲む汗は引いていき、火のように熱かった体も少しずつ正常体温に戻っていく。
それにホッとして、私は九条くんが目覚めるのを待った。
「…………?」
しかしここでいつもと違うことが起きた。
いつもならば発作が鎮まればすぐに目が覚めていた九条くんが、今日はしばらく経っても起きないのだ。
「どうしたんだろう……?」
不安が一気に押し寄せてきて、思わず胸元に揺れるホタル石に触れる。
すると私の呟きに反応した陛下が、「ふむ……」と首を捻った。
「どうやら随分と病の進行が早いようだ。そなたの妖力でなんとか凌いでおるが、これはアイツの時以上か」
「! この病気がなんなのか、陛下は知っているんですか!?」
ボソリと呟かれた言葉に反応し、私はすぐさま側に立つ陛下を見上げる。
すると陛下は私の横にしゃがみ込んで、九条くんをじっと見つめながら口を開いた。
「……昔から妖狐一族の男子には、この彼のような病を生まれつき患う者がいるらしい。私の友人もまた、同じ病に悩まされていた」
「友人……ですか?」
九条くんと同じ病を患う妖狐一族がいたなんて初耳だ。
もしかして九条くんが私に病気のことを詳しく話したがらないのは、一族の秘密に関わるから……とかだったのだろうか?
……あれ? でも陛下のご学友って確か、あの九条家当主だったんじゃなかったっけ? 他にも妖狐の友達がいたってこと?
「ああ、元々皇族と三大名門貴族は何かと近しい間柄でな。特にアイツとは同い年ということもあって、幼少の頃から随分と一緒に遊んだ。アイツは病を抱えながらもかなりアクティブでな。私とよく気が合った」
「へぇ、そんな昔から。じゃあ陛下にとって、その方は親友なんですね」
「――――」
羨ましい。そんな気持ちを込めて笑い掛ければ、陛下の表情はまるで時が止まったように固まった。
