雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 ◇


「……ふゆ、まふゆ!」

「はっ!?」


 肩を揺さぶられて慌てて前を向けば、先ほどはぐれた筈の九条くんが心配そうにこちらを見ていた。他のみんなもこちらに向かって走って来るのが見える。


「大丈夫? ぼぅっとして。もう陛下は城内にお入りになられたよ」

「えっ!?」


 その言葉に慌てて周囲を見回せば、ついさっきまでたくさんいた筈の警備員はいなくなっており、あれほど溢れかえっていた筈の群衆もいつの間にやらいない。


「城の中の見学も通常通り受け付けているみたいだけど、行けそう?」

「もちろん行けるよ! ごめん、なんかちょっとボーっとしてたみたい」


 笑って九条くんにそう答えながら、しかし内心は先ほどの出来事で頭がいっぱいだった。

 先ほどの出来事――皇帝陛下と視線が合った時、なんだか不思議な既視感を感じた。まるで懐かしいような、そんな不思議な既視感。


「……まさかね」


 私と皇帝陛下に接点なんかある筈も無いのに、変なの。
 脳裏に浮かんだ想像を振り払って、私はこちらへ走って来た朱音ちゃん達に手を振った。


 ◇


「こちら城内の順路図です。ごゆっくりどうぞ」

「ありがとうございます」


 はぐれたみんなと無事合流して受付を済ますと、職員さんに小冊子を手渡された。どうやらお城の内部は見学用の順路が決められており、それに沿って進んでいくようだ。
 細やかな細工が施された赤色の柱や豪華な金の調度品は、当時の王族達の豊かさを感じさせ、実に興味深い。


 ……興味深いのだが。


「はー、マジ凄かったよな! 皇帝陛下!」

「なんというか存在感が違ったよね! さすが人間でありながら、海千山千の妖怪達の頂点に立つお方だよ」


 城内を歩きながらも出る話題は、皇帝陛下のことばかり。みんな城の内部よりも、先ほど見た皇帝陛下に夢中だった。
 まぁそれだけインパクトのある出来事だったのだから、仕方ないと言えるが……。


「木綿先生、来れなくて本当に残念だったね。陛下のスケッチを見せたら元気出してくれるかな?」

「あはは、そうだね。朱音ちゃんの絵を見たら少しは元気になるかも。でもめちゃくちゃ悔しがるだろうなぁ」


 容易にその様が想像出来て苦笑する。「皇帝陛下を拝見出来るなら、這ってでも行ったのにぃぃ!!」とか言い出しそうだ。