◇
「わぁ……っ!」
「これは圧巻だね」
赤瓦と赤い壁。更に金の装飾が際立つ、大きく美しい宮殿。
かつてティダの地を支配していたという王族が築城したこの真っ赤なお城は、その圧倒的な存在感を持って私達を出迎えてくれた。
「すごいよ! 次々と着想が湧いてくる……!!」
言葉もなく目の前の光景に圧倒されていると、朱音ちゃんがすかさずカバンからスケッチブックを取り出して、一心不乱にスケッチを始めた。すごい。さすが根っからの芸術肌だ。
私も訪れたのは初めてでは無いが、かなり久し振りなので新鮮に感じる。
「ん……?」
「どうしたんだい? まふゆ」
「いや、なんか妙に警備員の姿が多い気がして……」
夏休みで観光客が多いから? でもそれにしても多過ぎなような……?
しかも警備員達は皆一様にピリピリしていて、なんだか物々しい雰囲気だ。もしかして何かあったのだろうか?
「確かに気になるけど、俺達の目的はあくまでも観光だし、一通り外観を見たら、次は城内を見学しようか」
「うん」
それもそうか。
九条くんの言葉に頷いて、私達はお城に向かって足を踏み出す。
――しかしその時、
「ピピーーーーッ!!!」
「わっ、うるさっ!?」
「なんだぁ!?」
浮かせた足を地面につけた瞬間、耳をつんざくような笛の音が響いて、思わず顔を顰めた。
「そこの5人組、ただちに止まりなさい!」
すると笛を持った厳めしい顔つきの警備員さんがそう叫んで、私達の元へと小走りで近づいて来るではないか!!
「えっ、えっ、何!? 私達何かやらかした!?」
「雷護……」
「いや、オレ何もしてねーし!」
そのまま不毛な罪の擦りつけ合いをしていると、ついに私達の前まで来た警備員さんが、「ちょっとちょっと、君達!!」と声を荒げた。