「ちょっと! この筆全然キレイに塗れないんだけどぉ!? 不良品なんじゃないの!?」
「はははっ! っつーか雪守、なんだよそれぇーー!? 獅子の眉が太過ぎて繋がってんじゃんか!!」
「むっ!? そう言う夜鳥くんこそ、獅子の唇が太過ぎてタラコ唇になってんじゃんか!!」
絵付け――それは既に出来上がっている獅子の置き物に色を塗ることを指す。
要は塗り絵の立体版ってことでしょ?
なんて舐めてました。すみませんっ! めちゃくちゃ難しいです!!
「雨美さん。筆が悪いんじゃなくて、持ち方ですよ。こう、鉛筆を持つように持ってください。夜鳥さんとまふゆちゃんは筆の角度を意識してみて。細かい部分はこうやって筆の角を使って――」
そう私達に説明をしながら、朱音ちゃんは自分の獅子に流れるような筆使いで色をつけていく。
正直上手過ぎて全く参考にならん。
あれ? というか、
「そういえば九条くんは?」
「神琴様ならもう絵付けを終えられて、隣の部屋の工芸体験も覗いてみると、少し前に出られたけど……」
「えっ、そうなの!?」
絵付けに夢中で全然気がつかなかった上に、もう終わったの!?
そう言えば以前、九条くんは自分で美的センスは無いって言ってたっけ。
ということは、さぞや絵付けの出来栄えも――。
「――――!?」
「えっ、それが九条様が塗った獅子!?」
「マジで!? もうプロじゃねーか!」
目の前の作品に驚き固まる私の後ろで、雨美くんと夜鳥くんが騒がしい。
しかしそれも無理はない。九条くんの絵付けした獅子は、お手本と寸分狂わずそっくりで。
いや、むしろお手本よりも美しくすらある。これで美的センス無いとか、絶対嘘でしょ!? 勉強に引き続き絵心でまで負けるなんて、地味にショックである。
そんな詮の無いことを考えていると、何やら絵付け部屋の入り口からキャーキャーと色めき立った声がした。
「? なんだろ?」
私が首を傾げると、様子を見に行った雨美くんと夜鳥くんが、揃って「あ」と声を上げた。
