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「お待たせしましたー。ソーキそばといなり寿司のセットです」
「おおっ、来た来た! 雪守オススメのセット!」
「ほんとだ! 一見すると、そばっていうより、ラーメンに見える!」
「すごーい、お出汁のいい匂ーい!」
注文し程なくして運ばれて来た待望のソーキそばに、みんなが歓声を上げる。
早速いただきますしてトッピングの角煮を頬張れば、口の中でホロホロ蕩けてなんとも言えぬ至福の味わいに、私は顔を綻ばせた。
「これは……いなり寿司?」
すると隣でソーキそばを食べていた九条くんが、いなり寿司を箸で摘んで不思議そうに言う。
「そうだよ。帝都のとは少し違うけど、ティダではこっちのいなり寿司が主流なの」
ティダのいなり寿司は、真っ白なお揚げに酢飯をたっぷり詰めた大きな正三角形をしている。私的にはこっちの方が見慣れているんだけど、やはり九条くんには珍しかったみたいだ。
「薄味だから、最初はビックリするかもね」
「へぇー。じゃあ、いただきます」
言って、九条くんがいなり寿司を口にする。
「…………」
果たしてティダのいなり寿司を気に入ってくれるのだろうか? 私は九条くんが食べ終わるのを、固唾を呑んで見守った。
……すると、
「――うん。帝都のとは確かに違うけど、美味しいよ。ティダに来てこんなに美味しい、いなり寿司が食べられるとは思わなかった。連れて来てくれてありがとう、まふゆ」
「そっか! えへへ。よかったぁ、気に入ってもらえて」
ふっと柔らかな微笑みを見せる九条くんに、生まれ故郷の味を褒められたのが嬉しくて、私はニマニマと頬を緩める。
――が、
「…………」
ジーーっと周囲からの視線を感じ、私はハッと我に返った。
見ればみんなして食事の手を止めて、こちらを凝視しているではないか!!
えっ、えっ、いつから!?
「ゴホンゴホン!」
羞恥心を誤魔化すように咳払いすれば、みんなもパッと視線をソーキそばに戻し、麺をずるずると啜る音だけが響く。それに私はホッと息をついた。
ああ、いけない。またやっちゃった。
どうして私ってば、いつも九条くんを前にすると、周りが見えなくなっちゃうんだろう……?
