「それで夜鳥さんは、まふゆちゃんがどういう水着を着たらよいと思われるんですか?」
「ふっ。よくぞ聞いてくれたな、不知火。オレが思う雪守が着るべき水着は――これだッ!!」
「!?」
そう叫んで、どこから取り出したのか見せてきた物体に、私は思わず目をひん剥いた。
「ちょーーっ!? これ布どころか紐じゃん!! こんなの着れる訳ないじゃん!!」
「え、そうか? じゃあこっちは?」
「はぁっ!!?」
更に〝こっち〟と言って見せてきた水着に、またも私の目は怒りで三角につり上がった。
「これ貝殻じゃん!! もはや水着ですらないじゃん!! だからそんなの着れる訳がないでしょ!!!」
「いやいや、こいつを着りゃ審査員の視線も釘付けだって!」
アホか! 好奇の的の間違いだろうが!!
南国に来て頭が陽気になっているのかも知れないが、これは頂けない。セクハラダメ、絶対!!
もっと怒鳴りつけてやろうと口を開くが、不意に横から黒い妖力が漂ってきたのが見え、私はギクリと口をつぐんだ。
そしてそれは夜鳥くんも同じだったらしい。
「や、と、り、さん?」
「いや、違うんだって不知火!! 冗談! じょーだんだって!!」
また〝ハウス〟されることにビビったのか、夜鳥くんがそう言い募って立ち去ろうと私達に背を向ける。
――しかし。
「夜鳥」
無情にも振り返った先には九条くんが立っており、その後ろには呆れたような表情の雨美くんもいた。
「どうやらお前はまだ燃え足りないようだな」
九条くんは地を這うような低い声とは裏腹に、その表情は笑顔だ。
けれどその右手からはゴウゴウと炎が噴き出しており、それを見た夜鳥くんが顔を一気に青ざめた。
「いや、これは違うんですよ、九条様!! オレは純粋に雪守が優勝出来るよう、人目を惹く水着を選んだだけで……!!」
夜鳥くんが言い訳になっていない言い訳を捲し立てる。
しかしそれをまるっと無視して、九条くんは笑顔のままジリジリと夜鳥くんに迫る。
「これまです。夜鳥さん」
更に反対側からは朱音ちゃんも――。
「うわっ、不知火もその妖力やめっ……! ぎゃああああああ!!!」
二人の妖狐に挟み撃ちされて、鵺の断末魔が響き渡る。
そしてそれが夜鳥くんの最期の叫びだった。南無。