「それって……妖怪の気配はしないのに、妖力らしきものを使っていたから?」
「うん、あの子がなんの妖怪の半妖かまでは分からないんだけどね。まふゆちゃん、前にわたしだけが黒い妖力を使って人を操れるって言ったの、覚えてる?」
「もちろん覚えているよ」
忘れる訳がない。
あの九条くんを探しに九条家へ乗り込んだ日の出来事は、全部鮮明に覚えている。
「これはわたしが暗部に入ったばかりの頃に葛の葉様から教えてもらったことなんだけど、半妖には妖怪とは違う〝特別な力〟があるんだって」
「〝特別な力〟……?」
あのトンデモ当主からの話とは、なんとなく胡散臭い響きだ。私が露骨に眉を顰めると、朱音ちゃんが苦笑する。
「力が現れる時期と能力の種類は、半妖によってバラバラなんだけどね。それに能力に目覚めたとしても強過ぎる力を上手く使えないことの方が多くて、これも半妖が不当な扱いを受けやすい原因のひとつみたい」
「そうなんだ……」
つまりカイリちゃんのあの力は半妖由来のものであり、まだ力をコントロールするには至っていない。まとめると、そういうことだろうか?
確かにそう考えれば、辻褄が合う。
「じゃあ朱音ちゃんは『人の心を操る能力』で、カイリちゃんは『人を跳ね飛ばす能力(仮)』ってことかぁ……」
そこまで考えて、ハタと気づく。
……じゃあ私は?
私だって雪女の半妖だ。二人のように〝特別な力〟がある筈。
『ん? ということは、やっぱり私の妖力ってすごいのかな? なんで九条くんに効いたんだろう……?』
『それは俺の方が知りたいよ。だから昨日も聞いただろ? 〝雪女しか知らない特別な妖術でも使った?〟って』
……多分、だけど。
それが〝癒しの力〟なの――?