「こんなお子ちゃまな水着で、カイリちゃんに勝てる訳が無いよーーっっ!!!」


 そう朱音ちゃんに怒鳴られた次の日、私は彼女に引きずられるようにして、他のみんなも一緒にティダ唯一の繁華街へと繰り出していた。

 理由はもちろん、私の水着探しの為である。


「これはどうかなー。あ、こっちもいいかもー」


 服飾店に入るなり、キャッキャッと楽しそうに店内に大量に並べられた水着を一枚一枚手に取っていく朱音ちゃんを眺めながら、内心溜息をつく。
 これが朱音ちゃんの水着選びなら私も張り切っていたのだろうが、いかんせん目的は私の水着選びである。全くテンションが上がらない。


「まふゆ」

「あ、九条くん」

「俺は夜鳥と雨美と一緒に男物の水着を見ているから、終わったら呼んで」

「分かった」


 私が頷けば、九条くんは男性用水着売り場へと消えていく。
 その後ろ姿をぼんやりと眺めていると、水着を手に取りながら朱音ちゃんがポソリと言った。


「木綿先生、二日酔いで寝込んじゃったから、一緒に来れなくて残念だね。せっかく水着を買った後は、お城の見学にも行くのに」

「うん……。お母さん際限なく飲むから、先生付き合うの大変だったと思う」


 案の定というかなんというか、やっぱり木綿先生は前日の飲み過ぎがたたって二日酔いになった。
 昨夜の木綿先生にどんどん泡盛を注いでいくお母さんの姿を思い出して、私は思わず遠い目をする。

 ちなみに木綿先生と同じくらい、いや倍以上飲んでいたお母さんは、今日も元気にお店へと出勤して行った。

 まったく、一体どういう体をしているんだか。