「あ、あたし……、ごめ……」
やはりというか、カイリちゃんの体は九条くんの怒気にあてられてカタカタと震えていた。それでも恐怖で掠れた声を絞り出すようにして、彼女は謝ってくる。
「ごめん……、ごめんなさい……」
「カイリちゃん……」
謝罪を繰り返すカイリちゃんの顔色は真っ青だ。その様子から先ほどのことは彼女が意図してやったのでは無いと伝わってくる。
そしてそれは九条くんも同じだろうに、一向に横から放たれる恐ろし過ぎる妖力を収めてはくれない。とにかくまずは九条くんに落ち着いてもらわないと。
「くじょ……」
声を上げて、きつく抱きしめられている腕から抜け出そうと身をよじる。
その時だった――。
「あーはいはい、ストップ! アンタ達、こんな人通りのある場所でケンカすんじゃないわよ。さっきからずーっと、注目の的になってるじゃない」
パンパンと手を叩きながら、お母さんがこちらに歩いて来る。その言葉に改めて周囲を見渡せば、確かにいつの間にかたくさんのギャラリーがこちらを何事かとチラチラ見ていた。
「風花さんっ!」
カイリちゃんはお母さんを見るなり、すぐに駆け寄って頭を下げる。
「すいません、あたし……」
「いいのよ、分かってくれれば。ただし休憩中だとしても、いきなり何も言わずに店を離れてケンカなんて、もうしちゃダメだからね」
「はい」
カイリちゃんが反省した様子で頷いて、それを見たお母さんが満足げに笑う。
「九条くんも、その物騒な妖力しまってちょうだい。せっかくティダに来てくれたお客さん達が怖がって逃げちゃうでしょ」
「……はい」
お母さんの言葉に、九条くんは渋々といった様子で頷く。するとようやく恐ろしかった妖力も鎮まって、やっと生きた心地が戻ってくる。
するとそんな私に、お母さんは一枚の紙を差し出してきた。
