「嘘だっっ!!!」

「まふゆっ!!」

「まふゆちゃんっ!!」


 カイリちゃんが叫んだ瞬間、パンッ! と何かが弾ける音と共に、体が高く放り出される。


「――――っ!!」


 そのまま勢いよく落下していく感覚に、地面に叩きつけられることを想像して、私はぎゅっと目を(つぶ)った。


「……?」


 しかし、いつまで経ってもその瞬間は訪れない。


「え?」


 不思議に思って握りしめていた手を下ろす。すると何か柔らかい感触を手のひらに感じる。


「?」


 私は恐る恐る視線を下ろし、そして視界にいっぱいに広がる光景に絶叫した。


「ぎゃあっ!! くく九条くん!? ごごごごめんっ、大丈夫っっ!!?」


 ――そう、何故か九条くんが私の体の下敷きになって寝転んでいて、私は慌てて彼の体から降りる。
 すると九条くんも体を起き上がらせて、そのまま私へと手を伸ばした。


「大丈夫かい、まふゆ? どこも怪我は無い?」

「あ……」


 言いながら怪我の有無を確かめるように、九条くんが私の体のあちこちに触れる。
 その焦った様子から、私が地面に叩きつけられないよう、庇ってくれたんだと悟った。

 私、また九条くんに守られてしまったんだ……。


「うん、どこも怪我してないよ。助けてくれてありがとう、九条くん」

「そっか」


 守られてばかりで申し訳なく感じる半面、同じくらい嬉しさも感じる。綺麗な金色の瞳を見つめてお礼を言えば、ようやく九条くんはホッとしたように微笑んだ。

 そのあまりに美しい表情に思わずポーっと見惚れ、


「あ」


 しかし手にあった筈のものが無くなっていることに気づいて、私は一転して顔を青ざめさせた。