「……ごめん、カイリちゃん。私には紹介出来そうな知り合いがいないよ」


 私は首を横に振って、一応九条くんと朱音ちゃんにも心当たりがないか聞いてみるが、やはり微妙な顔をされる。


「氷の妖力をもつ妖怪の大半は北の極寒の地であるカムイに住み着いていて、独自の文化を築いて暮らしているそうだよ。だからあまり他の地に住み着かないと聞く。それでも帝都にも少しはいるんだろうけど、数は多くないだろうね」

「そうなんだ」


 つまりカムイとは真逆の環境である南国のティダで育った私は、かなりの少数派なのか。
 極寒の地カムイ。どんな場所なのか少々興味が湧いて来た。


「そういえば今年の修学旅行の行き先がカムイだよね」

「え、そうだっけ?」


 朱音ちゃんの言葉に、頭の中に刻んだスケジュールを思い起こす。修学旅行の前に体育祭があるので、そちらの段取りにばかり気を取られてすっかり忘れていた。


「ねぇ、カイリちゃ……」


 だがカムイに行くのならば、ちょうどいい。もしかしたらカイリちゃんに協力してくれる妖怪を見つけられるかも知れない。
 そう伝えようと、私の肩を掴んだままのカイリちゃんの顔を見て、ハッと息を呑んだ。


「…………だ」

「!?」


 何やら様子がおかしい。
 彼女のまとう空気が徐々に張りつめたものへと変わっていく。

 私の両肩を掴んだ指も更にキツくめり込んで、思わず痛みに呻いた。


 その瞬間。


「嘘だっっ!!!」


 ――――パンッ!!


「まふゆっ!!」

「まふゆちゃんっ!!」


 カイリちゃんの叫び声と共に何かが弾ける音が耳に響き、私の体は何かの強い力によって、高く吹き飛ばされてしまったのだ。