「あ、そうそう。この子が今朝言ってたアルバイトに入ってもらってる、魚住カイリちゃんね。歳はアンタと同じよ」
誰? という表情が顔に出てたのだろうか? 私達の前までやってきたお母さんが、〝カイリちゃん〟を紹介してくれる。
「カイリも。その紫髪が前に話した、普段帝都の高校に通ってる、娘のまふゆよ。どう? ビックリするくらい、わたしと瓜二つでしょ?」
「娘……」
お母さんの言葉に、カイリちゃんがピクリと微かに反応した……ような気がした。
「えっと、雪守まふゆです。よろしくね!」
「……ああ。こちらこそよろしく」
「……?」
ヘラリと笑って挨拶するが、カイリちゃんには無表情で素っ気なく返されてしまった。
その態度だけ受け取れば、私に全く興味が無いように見える。
しかし何故か彼女からもの凄く視線を感じるような気がするのは、気のせいだろうか……?
「じゃあお母さん、私達他のみんなを待たせてるからもう行くね。カイリちゃんも、かき氷ありがとう」
「はいはい。あ、そうだ。そのかき氷新作だから、みんなの感想聞いといて」
「分かった」
カイリちゃんの視線の理由は少し気になるが、それよりも早く夜鳥くん達のところへ戻らなければ。
ただでさえ自称同級生に絡まれて時間をロスしたのだ。この炎天下でかき氷が溶けてしまえば、また貴族コンビ辺りがブーブー言いそうである。
「ありがとうございます、またどうぞ」
ハスキーな声で響くお決まりの挨拶を背に、会計を済ませた私達は、足早にかき氷を持って店を後にした。