「はー食った食った。食後に何か甘ぇもん食いたくなってくんなぁ」

「散々肉にも魚にも野菜にも練乳かけて食べてた癖に、よく言う……」

「は? 飯と菓子は別モンだろーが」

「それはまぁ、分かるけど……」


 さっきの海老のこともあり、つい冷めた目で夜鳥くんを見てしまうが、確かに食後のデザートが食べたいのは同感である。


「じゃあよかったら、うちのお母さんのかき氷食べる? すぐ近くの屋台だから、私がひとっ走り行って買ってくるよ」

「え? かき氷は食べたいけど、まふゆちゃんだけなんて運ぶの大変だよ。お店も見てみたいし、わたしも行く」

「いや、朱音と二人でも大変だろ。俺も一緒に行くよ」


 そう言って私と同時に立ち上がった九条くんと朱音ちゃんに、思わず苦笑してしまう。妖狐というのは心配性な生き物なのだろうか?

 とはいえ朱音ちゃんとは今朝、一緒にお母さんの店に行こうと言っていたのだっけ。それに九条くんの言う通り、全部で六つのかき氷を運ぶのだから、手は多い方が助かるのも事実。


「ありがとう。じゃあ二人にも一緒に来てもらおうかな。先生は雨美くんと夜鳥くんを見ててください」

「はい、後片付けも任せてください。三人とも、お気をつけてー」


 木綿先生に手を振られ、私達はお母さんのお店へと向かうのだった。


 ◇


「――へえ。まふゆもよく風花(かざはな)さんのお店の手伝いをしていたんだ」

「うん。氷を削ったりとか、お会計とかね。お母さんのかき氷はオシャレだって観光客に結構人気だから、期待してていいよ」

「わぁー、楽しみ!」


 かき氷屋へと向かう道中、三人で他愛ない話をしながら歩く。観光シーズンということもあって、辺りにはお母さんの屋台以外にも多くの屋台がずらりと立ち並んでおり、とても賑やかだ。
 唐揚げや焼きそばといった定番ものから、ティダ名物のタコライスやサーターアンダギーの屋台まであって、美味しそうな匂いが辺りに立ち込めている。


「なんかさっきバーベキューしたばっかりなのに、また食欲が湧いて来ちゃうね」

「だよね! 後で何か買っちゃおうか?」

「うん、そうしよう!」

「……二人揃ってお腹壊さないよう、ほどほどにしなよ」


 あちこちの店をキョロキョロ見渡しながらクスクス笑い合う。
 それに九条くんが呆れたように苦笑した時、朱音ちゃんが何かを見つけたのか、「あっ」と声を上げた。