◇
「お、うまぁっ!!」
「なんかこーゆーところで食べると、いつもよりも美味しく感じるかも」
「あー、分かる分かる!」
雲ひとつ無く晴れ渡る青空に、エメラルドグリーンの海。そして真っ白な砂浜で食べるバーベキュー。
最高のシチュエーションを前に、みんながいつも以上に饒舌になり、食事もガンガン進んでいく。
「まふゆちゃんも海老食べて。美味しいよ」
「あ、ありがとう! 朱音ちゃん……!」
朱音ちゃんの手ずから皿に海老を入れてもらい、私は込み上げる嬉しさを隠しきれずニマニマと破顔する。
〝ああ、朱音ちゃんの海老。大事に食べよう〟
そう考えて、海老に箸を伸ばす――が、
「ああー雪守ちゃん、そのままじゃ海老本来の美味しさは感じられないよ?」
「え?」
チッチッと人差し指を振って、雨美くんが何やら赤い物体を私の海老にぶっかけた。
「え……?」
「おいっ! んな真っ赤な海老、水輝しか食えねぇだろうが!! ほら雪守、やっぱ女はこっちの方がいいだろ!!」
今度は夜鳥くんがそう言いながら、白い物体を赤く染まった私の海老の上にぶっかける。
「は……?」
「ちょっと雷護! 何やってんのさ!? そんな甘いの、雷護しか食べられないでしょ!!」
「はぁ!? ハバネロソースなんかの何倍もこっちの方がうめぇだろ!!」
「練乳なんて常識的に考えて海老に合う訳ないじゃん!! バカでしょ!!」
「何を!?」
「何さ!?」
「…………」
一瞬の出来事に何が起きたのかとっさに理解出来なかった私だが、睨み合う二人を呆然と見つめている内に、ふつふつと怒りが沸いてきた。
……ハバネロソース? 練乳だぁ?
『まふゆちゃんも海老食べて。美味しいよ』
よくも。
よくも朱音ちゃんが私にくれた海老を……!
「雨美くんっ、夜鳥くんっ!! 食べ物で遊ぶんじゃなーーいっっ!!!」
この時の私の怒号は水平線の彼方まで轟いたとか、なんとか。
なおハバネロと練乳まみれの海老は、貴族コンビが美味しく頂いたことだけは忘れず付け加えておく。