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「お、うまぁっ!!」

「なんかこーゆーところで食べると、いつもよりも美味しく感じるかも」

「あー、分かる分かる!」


 雲ひとつ無く晴れ渡る青空に、エメラルドグリーンの海。そして真っ白な砂浜で食べるバーベキュー。
 最高のシチュエーションを前に、みんながいつも以上に饒舌(じょうぜつ)になり、食事もガンガン進んでいく。


「まふゆちゃんも海老食べて。美味しいよ」

「あ、ありがとう! 朱音ちゃん……!」


 朱音ちゃんの手ずから皿に海老を入れてもらい、私は込み上げる嬉しさを隠しきれずニマニマと破顔する。

〝ああ、朱音ちゃんの海老。大事に食べよう〟

 そう考えて、海老に箸を伸ばす――が、


「ああー雪守ちゃん、そのままじゃ海老本来の美味しさは感じられないよ?」

「え?」


 チッチッと人差し指を振って、雨美くんが何やら赤い物体を私の海老にぶっかけた。


「え……?」

「おいっ! んな真っ赤な海老、水輝(みずき)しか食えねぇだろうが!! ほら雪守、やっぱ女はこっちの方がいいだろ!!」


 今度は夜鳥くんがそう言いながら、白い物体を赤く染まった私の海老の上にぶっかける。


「は……?」

「ちょっと雷護(らいご)! 何やってんのさ!? そんな甘いの、雷護しか食べられないでしょ!!」

「はぁ!? ハバネロソースなんかの何倍もこっちの方がうめぇだろ!!」

「練乳なんて常識的に考えて海老に合う訳ないじゃん!! バカでしょ!!」

「何を!?」

「何さ!?」

「…………」


 一瞬の出来事に何が起きたのかとっさに理解出来なかった私だが、睨み合う二人を呆然と見つめている内に、ふつふつと怒りが沸いてきた。


 ……ハバネロソース? 練乳だぁ?


『まふゆちゃんも海老食べて。美味しいよ』


 よくも。

 よくも朱音ちゃんが私にくれた海老を……!


「雨美くんっ、夜鳥くんっ!! 食べ物で遊ぶんじゃなーーいっっ!!!」


 この時の私の怒号は水平線の彼方まで(とどろ)いたとか、なんとか。

 なおハバネロと練乳まみれの海老は、貴族コンビが美味しく頂いたことだけは忘れず付け加えておく。