雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 来た? 何が??

 慌てて横を見れば、今まさに九条くんが釣竿を胸に手繰り寄せて魚と格闘しているところであった!


「マジかよ!? あのエサに触るとか九条様ヤベーな!!」

「真っ直ぐに釣竿を振れたんだね! スゴイよ、九条様!!」

「まふゆ、この後はどうすればいいんだい?」

「程よい力加減で一度魚を泳がせて、疲れさせた頃に思いっきり引いて! 糸が切れないように注意してね!」


 ピントのズレた貴族コンビの感想はマルっと無視して、私は力こぶしを握り、九条くんに指示を出していく。

 そして――。


 シュパーンッ!!


 大きな水しぶきと共に、巨大な魚が勢いよく釣り上がった。


「――――っ」


 ビチビチと勢いよく尾をバタつかせる巨大魚。その姿を全員でしばし呆然と見つめる。
 周囲の釣り人達も大物が釣れたということで、わらわらとこちらに集まってきた。


「おおっ! スゴイな兄ちゃん!」

「こんな大物釣ったの、風花(かざはな)さん以外で初めてだぞ!」

「ああ、風花さんはスゴイ腕前だよなぁ。昨日ももんのすごかった」

「あんな細っこい美人が、大物を悠々釣り上げてんだもん。初めて見た時はたまげたなぁ〜」

「そうそう」


 何故か釣り人達の話は目の前の大物の話題から、お母さんの話にシフトしていた。
 まさかこんなところでお母さんの話を聞くとは思わず、なんとも居た堪れない。


「クソー、オレも大物釣りてー! なんか他に良い釣り場ねぇのかよ?」

「あっ! あそこなんて釣れそうじゃない!?」

あそこ(・・・)?」


 雨美くんが指差す方を見れば、あるのは海岸から簡素な桟橋が掛かった先にポツンと海に浮かぶ鬱蒼(うっそう)とした木々に覆われた小島だった。

 というか、あの小島は――……。


「ああ、〝ザンの森〟に近づくのは止めといた方がいい」


 一人の釣り人がそう言うと、周りの釣り人達も同意するように頷く。


「そうそう。昔からあの森は〝人魚が流れ着く場所〟なんて呼ばれていて、森を荒らすと海神様(うみがみさま)の怒りを買うって言い伝えられてんだ」

「まぁもっとも、最近の若ぇヤツらは言い伝えなんてお構いなしに、肝試しして遊んでるって聞くけどな」

「そうなんです! まったく、許せないですよねっ!」


 釣り人達の言葉に強く頷いて(いきどお)っていると、九条くんが不思議そうに首を傾げて私を見た。