「まふゆ、あそこ」
「あっ! ホントだ、いたっ!! もぉー二人とも! 突っ走り過ぎだよー!!」
朱音ちゃん達と別れ、九条くんと二人で海岸沿いの釣り場に来た私。
そこで雨美くんと夜鳥くんを探せば、この人混みの中でも目立つツンツンの黄色い髪とツヤツヤの青い髪はすぐに見つかった。
「……ん?」
急いで駆け寄れば、何やら二人が大声で喚いている。
「クッソォー! なんで釣れねーんだよっ!」
「もーつまんなーい! 釣り飽きたー!」
「ええ……」
どうやら釣りが上手く出来なくて癇癪を起こしているらしい。その姿に思わず「子どもかっ!?」と言いたくなる。
周囲の釣り人も何事かと二人をジロジロ見ているし、恥ずかしいので早く回収せねば。
「ちょっとちょっと、二人とも! そんなやり方じゃ、釣れないに決まってるじゃん!!」
「あ、雪守ちゃんに九条様」
「なんだよ? オレらのやり方の何が違うってんだよ!?」
「もうっ、よく見てなさい!」
騒ぐ二人の釣竿を取り上げて、見本を見せてやるべく、私は釣竿を構える。
「まずエサはちゃんと付けて。じゃないと魚が食いつかないから」
「けどよ、そのエサ生きてて気持ち悪ぃじゃん……」
そう言って私が摘んで見せたエサを、ビクビクしながら夜鳥くんが指差した。
いや、乙女かっ!?
「何、女子みたいなこと言ってんの!? ほらっ、それからきちんと沖に向かって釣竿を振るの!」
ビュッ! といい音と共に、エサが海面に着水する。
「えーっ!? そんな真っ直ぐに振れないよぉー! ずっと立ちっ放しで腰も痛いし……」
そう言って雨美くんが自分の腰をさすって見せる。
いや、年寄りかっ!?
「もぉーっ! 高校生の癖に、そんなおじいちゃんみたいなこと言わないでよ!!」
ぶーぶー文句を言う貴族コンビに青筋を立てながら、最大限に懇切丁寧に釣りのいろはを教えていると、横で二人と一緒に私の説明を聞いていた九条くんが呟いた。
「あ、来た」
「え?」