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「風花さんは、なんのお仕事をしているの?」
台所にて。
私が洗い終わった皿を横で受け取って拭きながら、朱音ちゃんが私を見上げる。
「かき氷屋さん。この時期はちょうど観光客が一年で一番多いから、わりと忙しいんだよ。だから去年も帰省する間は、私が店の手伝いをしていたんだけど」
「そういえばさっき風花さん、〝アルバイトを雇った〟って言ってたね」
「うん」
今までどんなに忙しくてもアルバイトは雇わなかったお母さんが、どういう風の吹き回しだろう? どんな子を雇ったのか、気になってしまう。
「でもいいなぁ、かき氷! 今日も暑いし、食べてみたいな!」
「じゃあ後でお店に行ってみよっか?」
「うん!」
「おいおい、かき氷の前にまずは昼飯だろーが」
すると私達の話に割って入るようにして、夜鳥くんが台所に入って来た。男子達には昼に何を食べたいか決めておくように言っておいたが、決まったんだろうか?
「何、昼決まったの?」
「おう、それなんだけどよ。この家の裏にある海って、絶好の釣り場だって風花さんがさっき話してたじゃん? だから折角だし、オレらも魚釣ってバーベキューなんてどうよ?」
「バーベキュー!?」
夜鳥くんの言葉に朱音ちゃんがキラキラと目を輝かせる。それを見た夜鳥くんが「決まりだな」と私に言うので、勿論と頷く。
朱音ちゃんが喜ぶのなら、私に断る理由はない。
そうと決まれば海へ行く準備をしようと、私は着けていたエプロンを外す。
「……?」
すると何やら妙な視線を感じて振り返れば、夜鳥くんが何故か私をジッと見ていた。