「――さて、問題は部屋割りだけど」
朱音ちゃんの可愛さにきゅんきゅん悶えつつも、当初の予定より大幅に増えた人数でどうやって寝るかを、この後私達は真剣に協議した。
結果、朱音ちゃんは私の部屋。木綿先生と雨水くん、夜鳥くんは客間。
そして九条くんは当初予定していた客間が使えなくなってしまったので、お父さんの部屋で寝てもらうことで落ち着いたのだ。
「俺が使っても大丈夫なの? もし君のお父さんが帰って来たら……」
「大丈夫だよ。少なくとも私は一度もお父さんが帰って来たとこを見たことが無いし」
お父さんの部屋に案内すると、九条くんが遠慮がちに眉を下げる。けど部屋だって、使われないより使われた方が嬉しいに違いない。
「まふゆのお父さんって、どんな人なの?」
「うーん、分かんない」
「分かんない?」
私の言葉に、九条くんが不思議そうに首を傾げる。
「うん。お母さんの話だと、人間で冒険家らしいけど、私は会ったことないし」
だから私にとって父という存在は、全くピンとこない。
冒険家という職業もかなり胡散臭いし、お母さんは騙されたんじゃと内心疑っている。まぁあのお母さんが、みすみす男に騙されるとは考え難いけどね。
「使われる予定も無い部屋を用意して、お母さん、バカだよね……」
「…………」
「とにかく、遠慮しないで使ってよ」
私が笑って言えば、ようやく納得してくれたのか、九条くんが頷いた。
◇
……ちなみに。
この後部屋割りについてまたも貴族コンビが雑魚寝は嫌だと文句を垂れたのだが、九条くんの右手にチラつく炎を見た瞬間、青ざめて口を噤んだのだった。