「ははは、そうですね。元々クラスは同じだったんですが、親しくなったのは生徒会活動を通じて……ですかね」
「九条くんが生徒会長で、私が副会長なの」
九条くんの言葉に私が補足すれば、お母さんが刺身を醤油につけながら、感心した声を上げる。
「へー、日ノ本高って今でも成績順で生徒会メンバーを選抜してるんでしょ? じゃあ九条くんは学年トップ。すごい頭いいんだぁ」
「あれ? 生徒会に選ばれる基準なんて、なんでお母さんが知ってるの? 私話したこと無かったよね?」
「なんでって、そりゃあわたしが日ノ本の卒業生だからだし。あ、ちなみにわたしも生徒会やってたことあるわよ」
「はぁ!?」
刺身を食べながらシレッと言われた事実に、思わず立ち上がる。
卒業生なんて、そんな話初めて聞いたんだけど!? しかもまさかお母さんが生徒会に選ばれていたなんて……!!
失礼ながら普段のガサツっぷりからそんなに勉強出来るとは思っていなかったので、我が母ながら正直意外だ。
「あの……」
すると私達の話を聞いていた九条くんが、真剣な顔つきで口を開いた。
「不躾なことを聞いてしまいますが、日ノ本高校の卒業生と言うなら風花さんは……、九条葛の葉という女生徒のことは知っていませんか?」
「あ……」
九条くんの言葉に、心臓がドキリと跳ねる。
当主とお母さんの関係はそれとなく聞いてみるつもりだったが、まさか帰省初日に、しかも九条くんがこんなド直球に聞くとは思わなかった。
とはいえこれは、お母さんに聞き出すまたと無いチャンスである。
木綿先生の話だと、九条家当主も日ノ本高校の卒業生。つまりそこで二人の間に何かしら接点があっても不思議じゃないということ。
私はゴクリと唾を飲み込んで、お母さんの言葉を待つ。
「ああ、葛の葉? うん、知ってる~。ていうか生徒会で一緒だったし、フツーに顔見知りよ」
「ちょっ……!」
軽ーい調子で肯定したお母さんに、堪らず私は声を上げた。