「おー! 床が見えてる! こうして見ると、実は結構部屋の中が汚れてたのねぇ」
「こうして見なくたって、めちゃくちゃ汚れてたよ!!」
ケラケラ笑うお母さんに思わずツッコめば、くすりと九条くんに笑われてしまい、恥ずかしくなる。
うう、お母さんのせいだ。
結局掃除は居間だけに留まらず、台所に風呂にと気になり出したらキリがなくなっていた。ティダに到着した時には午前中だった筈が、今やとっぷりと日も暮れている。
家の掃除に一区切りをつけた私達は、例のバカでか魚と家にある適当な食材で簡単な晩ご飯を作り、今ようやく食卓についたところだった。
「まーまー、そんなにカッカしてると、若いのに血圧上がるわよ?」
「お母さんのせいでしょー!」
「まぁまぁ……」
九条くんに宥められて、バツが悪いのを隠す為に私はご飯を掻き込む。
掃除に留まらず、料理まで九条くんには手伝わせてしまった。お客さんなのに、しかも雲の上のお貴族様なのに、申し訳ない気持ちでいっぱいである。
とはいえ思った以上に早く片付いたので、手伝ってもらったのは大変に助かった。
「あ、この煮魚美味しい。まふゆは料理も上手なんだね」
「え、そうかな? 九条くんの口に合ってよかった。ごめんね、もっとちゃんとした料理を作りたかったんだけど、時間が無くて有り合わせのもの出しちゃって……」
「そんなことないよ。まふゆの手料理を食べられるなんて、ティダに来て本当によかった」
「九条くん……」
微笑む九条くんに、ジワジワと頬が熱くなる。
「はぁー熱い、熱いねぇ。若者の青春はかくも眩しいものかね。おばさんには辛いわぁ」
「!!」
その言葉に、ハッと目の前にお母さんがいたことを思い出す。
お母さんはバカでか魚の刺身を肴にしながら、グラスに注いだ泡盛をグビグビ飲んで、揶揄うような視線をこちらに向けてくる。
「で? 九条くんはまふゆと何がキッカケで仲良くなった訳? あ、別に尋問って訳じゃないよ。ちょっとした親心だから、気楽に答えてよ」
「ちょっとお母さん! さっきも言った通り、私と九条くんは別にそんなんじゃ……」
「はーい、外野は黙っててくださーい! で、九条くん、どうなの?」
「は!? 外野!?」
妙にしつこいお母さんに、九条くんが苦笑しながらもポツポツと話し出す。