『風花に伝えておけ、このままでは終わらんとな』
夏休み前、九条のお屋敷で九条家当主――九条葛の葉と対峙した時に上げられた名前。
雪女で風花という名の人物は、世界広しといえどもお母さんしかいないだろう。それなら私が当主に名乗った際に、〝雪守〟という名字に反応していたのも納得がいく。
実は今回の帰省の目的のひとつとして、お母さんにその辺の事情も聞き出すつもりでいる。
とはいえ下手に墓穴を掘って、私が雪女の半妖であることを九条くんや九条家当主にバレてしまったことは知られたくないので、不審に思われない程度にそれとなくではあるが……。
「――まふゆ」
目標が定まり、よしっと気合いを入れ直していると、九条くんに肩をトントンと叩かれた。それに「何?」と振り返れば、九条くんが戸惑ったような顔でこちらを見ていて、私は首を傾げる。
「? どうしたの?」
「……まふゆ。君のお母さんは、雪女で間違いないんだよね?」
「うん? そりゃもちろん間違いないよ。九条くんだって私が雪女の半妖なこと、知ってるでしょ?」
何を今更と笑えば、九条くんが視線を彷徨わせ、言い淀みながらも口を開く。
「まふゆは今まで気がつかなかった? 風花さんから、妖力が全く感じないことに」
「え……?」
九条くんの言葉に一瞬時が止まる。
お母さんから妖力を全く感じない……? 半妖ならともかく、純粋な妖怪がそんなことあり得るのだろうか?
今まで思いもしなかったから、全く気がつかなかった。
「本当に風花さんは雪女なの?」
「あ……」
その問いにすぐさま言葉が出て来ず、ぐるぐると私の思考が回る。
――その時だった。
「まふゆー! 九条くーん! そんなとこで突っ立ってたら、全身真っ黒けになるわよぉ!! 早く入っておいでってー!!」
「!!」
陽気なお母さんの声が、玄関先から響いてハッとする。そしてそれは九条くんも同じだったようだ。
「……とにかく、家の中に入ろうか」
「うん……」
九条くんに促され、私達は家の中へと入る。
『本当に風花さんは雪女なの?』
もしお母さんが雪女じゃないのなら、じゃあ私は一体――……。
