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「――え? 俺のことなら気にしなくて大丈夫。それよりまふゆは、お母さんに元気な姿を見せておいで」
そうして生徒会が終わった後。すっかり日課となった九条くんの転移で寮の彼の部屋に到着した際に、私は早速話を切り出した。
しかし思いの外あっさりと大丈夫だと言う九条くんに、何故か私の方が焦って言い募る。
「だ、大丈夫って……! 毎日最低でもニ回は発作を起こしているんだよ!? 絶対大丈夫な訳ないじゃん!!」
「夏休み中は部屋でずっと寝ていられるし、発作も時間が経てば徐々に落ち着いてくるから」
「でも……っ!」
「既に契約関係は破綻して、今はあくまでまふゆの厚意に甘えている状態だ。そんなに俺のことを気にしなくていい」
「…………」
〝契約関係は破綻〟……。
その言葉にぎゅっと胸が詰まる。
『今のって妖力だよね? もしかして雪守さんって……妖怪?』
はじまりは、ひょんなことから九条くんに私が雪女の半妖であることを知られ、逆に九条くんが病を患っていることを私が知ったから。それで互いの秘密を守る為、私達は契約関係になったのだけど、でもそれは九条葛の葉に私の秘密が知られたことで崩れてしまった。
それでもなお私が九条くんに妖力を使い続ける理由を、九条くんは〝私の厚意〟だと思っているみたいだけど、ちょっと違う。
『……分かっておるのか? その楽しい楽しい時間にも、必ず終わりが来ることを』
あの地下室で言い残した、九条葛の葉の言葉がまだハッキリと耳に残っている。
九条くんはただの当て付けだと言ったけど、私にはとてもそうは思えなかった。
「……まふゆ?」
黙り込んでしまった私の顔を、九条くんが覗き込む。心配そうなその表情は、本当に私を気遣ってくれているのだと感じる。さっきの言葉だって私の為。分かってる。だけど、だからこそ悔しい。
だって私達は色んなトラブルを一緒に乗り越えてきた仲間じゃないか! それなのに一番苦しい時に頼ってくれないのは、あまりに寂しいよ……!!
「あっ、そうだ!! なら九条くんが私と一緒にティダに来れば、解決じゃない!!」
「えっ!?」
「よし、決めた。そうしよう!!」
「ちょ……っ、ちょっちょっ、まふゆ!?」
名案に自画自賛する私の両肩を九条くんがガッチリ掴んで、こちらを妙に真剣な顔で見つめてくる。
肩に指が食い込んで痛いんですが。
