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「……なるほど、理由は分かった」
そこまでわたしが話し終えると、この件はすぐに葛の葉様へと報告が上がった。
彼女の「神琴を地下室へ連れて参れ」との命令に、暗部仲間達がぐったりとした神琴様を運び上げる。
「あっ、わたしも一緒に……!」
「それはならんと主様のご命令だ」
「っ、」
地下室にわたしがついて行くことは許されなかった。
一体葛の葉様と二人きりで、神琴様に何を話されているのだろう? 不安ばかりが募っていく。
そうして明るかった空に夜の帳が下りた頃。ようやく姿を見せた神琴様は、すっかり人が変わってしまったように見えた。
〝ばあや〟という甘えられる相手を失ったからか、幼さが消え大人びた表情をするようになった神琴様は、ますます読書と勉学に没頭していく。
それは日ノ本高校に入学してからも変わることはなく、決して他者と交わることはなかった。
わたしはそんな神琴様を見守る内に、いつしか彼の母親であるかのようなことを願うようになっていく。
〝どうか健やかに、神琴様を想い、彼の傷ついた心を癒やしてくれる人が現れますように〟――と。
……そしてその願いは、意外な形で叶うことになったのだけれど。
