◇
「はぁ……」
人気のない中庭に着いて、わたしはやっとホッと息をつく。
そして地面にぺたんと座り込んで俯いた。
どうしてこんなことになったんだろう……?
あんな不気味な妖力がわたしのものだなんて、信じたくない。
「…………」
そう思うが、右手をかざして現れるのはやっぱり不気味な黒い妖力。
「……お絵かきしよう」
気落ちした心はまだ回復しないが、なんとか気分を変えようと、わたしはスケッチブックを開く。そしてふと視線を上げた時、わたしは息が止まるような衝撃を受けた。
「――――っ」
渡り廊下に佇む、それはそれはとても綺麗な子を見つけたのだ。
お日様の光でキラキラと輝く白銀の髪と、まるで琥珀のような金の瞳。お人形のように整った顔立ちは高貴さすら感じて、まるでどこかのお姫様のようだった。
だけどその子がお姫様ではなく男の子なのだと分かったのは、彼が着ている袴が赤色ではなく、白色であったからだ。
「わぁ……」
そのまま男の子に見惚れていると、彼の後ろから現れた年嵩の侍女が何事かを彼に話して、二人は渡り廊下を去っていく。
その姿が見えなくなってもなんだか名残惜しくて、ぼぅっと彼の立っていた場所を見ていた時だった。
「神琴が気になるか?」
「っ!?」
急に背後から聞こえた声にビクリと体を震わせ、わたしは慌てて後ろを振り返る。
するとどこから現れたのか、長い黒髪に黒い着物。それに両目を黒いレースで隠した、わたしよりも少し年上に見える女の子が一人、佇んでいた。
「あ、あの……」
誰? と聞こうとして、ハッと母に言われていたことを思い出す。このお屋敷で一番偉い当主様は、〝黒い着物を着て幼い女の子の姿をしている〟と。
「当主……様……?」
恐る恐る女の子に問いかけると、女の子は感嘆したような声を上げた。
「ほぉ、妾が誰か分かっておるのか。その歳にしてはしっかりしておるな。……ふむ。半妖にのみ現れる特殊な妖力が目当てであったが、利口であることも都合が良い」
「…………?」
ジロジロと観察されながら呟かれる言葉の意味の半分も理解出来なくて、わたしはひたすら居心地悪く身を縮める。……そして、
「――よし、決めた。神琴の監視役、そなたが適任じゃ」
この当主様の言葉によって、わたしの運命は大きく動いていくことになる――……。
