雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



「――――――?」


 次にうっすらとまぶたを開いた時、視界いっぱいに映ったのは、とても美しい紫髪の少女だった。

 まさか本当に天からの使者が現れたのだろうか?

 そうぼんやりと考えていると、ひんやりと額に何かが触れる気配がした。すると途端に、触れた箇所から高熱も、息苦しさも、妖力の暴走も治まっていく。

 そうして朦朧(もうろう)としていた意識が一気に覚醒した瞬間、俺は目の前の存在を逃さないよう、急いで手を伸ばした。


「今のって妖力だよね? もしかして雪守さんって……妖怪?」


 天からの使者だと思っていた少女は、紛れもなく副会長であり、隣の席の雪守まふゆであったのだ。

 そしてこの出来事がきっかけとなり、彼女に導かれるようにして、暗闇だった俺の世界が一変することを、この時の俺はまだ知らない――。


 ◇


「あああああーっ!! また2位だったなんてーっ!!!」


 生徒会室の机に伏しながらまふゆが大袈裟に泣き叫ぶ。それに横に座った夜鳥(やとり)が「ほれ見たことか」と煽って、更にまふゆは大泣きしてしまう。

 以前の騒動の火種にもなった、学期末テストの結果が夏休みを明日に控えた今日、貼り出された。
 結果はいつも通り、俺が首位でまふゆが2位。

 あれだけ勉強に力を入れていた分、ショックも大きかったらしく、生徒会が始まってもまふゆはずっとこの調子だった。


「う……うう……」


 まふゆの泣き声に罪悪感でいっぱいになる。俺はまふゆの涙にとても弱い。


「……はぁ」


 どうしたものかと溜息をつけば、周囲から厳しい視線を感じた。
 見ればまふゆを囲むようにして座っている、夜鳥に雨美(あまみ)木綿(ゆう)先生が、「お前のせいだろ、なんとかしろ」という視線を送ってくる。

 彼らも俺同様、まふゆの涙には弱いのだ。

 何せまふゆは、その儚げで女性らしい容姿とは裏腹に、さっぱりとした明るくパワフルな性格の持ち主で、こんな風に悲しみを(あら)わにすることは(まれ)である。

 稀であるにも関わらず、ここ最近は泣かせてばかりだったことを思い返し、ますます罪悪感が募る。彼らの無言の訴えの通り、早くまふゆに泣きやんでもらわなければ。


「まふゆ、まふゆ」

「…………ぐすっ」


 俺の呼びかけにようやくまふゆが顔を上げ、俺を見上げる。興奮していたせいか頬は赤みを増し、大きな赤い瞳は涙で濡れて、ポロリと一雫が溢れ落ちた。