雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 ◇


「はぁ……はぁ……」


 保健室のベッドに寝転がりながら、今日も俺は発作によって引き起こされた、異常な発熱にうなされる。

 憧れというのは所詮憧れのままなのだと、日ノ本高校に通って丸一年が経ち、17歳。高校2年生になった俺は身をもって実感していた。
 念願の高校生活は、俺の想像とはまるで違っていたのだ。


「はぁ……、っ……」


 頻回な発作で授業に出ることもままならず、友人を作ろうにも、九条家の次期当主という話だけが一人歩きして遠巻きにされる。八方塞がりだ。
 しかも成績だけは幼い頃からの勉強漬けの成果か、常に学年首位。結果2年となった今年、強制的に生徒会長に任命されてしまった。

 くしくも学校に憧れを持つきっかけとなった、小説の主人公と同じ生徒会長となったものの、その実態はまるで違う。
 あの小説の主人公は、生徒会の仲間と共に学校を改革すべく、生徒会長として先頭に立っていた。
 方や俺は、生徒会どころか授業にすらまともに出られず、日々を保健室で過ごしている情けない男。天と地ほどの差だ。 

 そういえば副会長になった雪守(ゆきもり)さんが、俺の代わりに生徒会長の仕事をこなしていると、周囲が話しているのを聞いた。
 雪守さんのことはよく知っている。彼女はとても目立つ女生徒だったからだ。

 美しい容姿に、人間でありながら妖怪顔負けの頭脳と運動神経。性格も面倒見がよく、サバサバとしていて、妖怪人間問わず彼女に憧れる者は多い。
 かくいう俺もその一人だった。

 生徒会の仲間と共に、学校を改革すべく生徒会長として先頭に立つ。まさに雪守さんは、あの小説の主人公そのもの。まるでヒーローのような人だった。
 そう考えると、彼女に余計な負担をかけている自分は、なんて惨めなのだろう。


「はぁ……っう、……」


 呼吸が上手く出来ない。どうやら今日の発作は長引くようだ。
 俺はこの先ずっと、妖狐の男にしか現れないという奇病に怯え、症状に身悶えしながら死んでいくのか? 

 ……ならばいっそ、ひと思いに殺してこの地獄から解放してくれ。

 そう願って俺は、自身を(さいな)む熱さに耐えきれず、いつの間にか意識を失っていた。