雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



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 差出人の欄に、日ノ本高等学校(ひのもとこうとうがっこう)と書かれた封筒の中身を確認する。


「やった、合格……」


 合格通知に俺は喜びを噛み締めながら、初めて送ることになる学校生活に思いを馳せた。 

 ――ばあやがいなくなって早5年。

 15歳になった俺は、相変わらず病に悩まされていた。発作の間隔は成長するにつれ短くなっており、最近では最低でも二日に一回。調子の悪い日は、毎日発作が起きることもある。

 確実に実感する命の期限に、俺はかねてより憧れていた学校へ通いたいと何度も思うようになっていた。そこで思い切って葛の葉に伺いを立てたところ、意外にもあっさりと了承が返って来たので驚く。


「このまま屋敷の中だけで生涯を終えるのは、少々哀れだと情けをかけただけじゃ」


 何か裏があるのかと(いぶか)しがれば、すぐに嫌味が飛んで来たが、了承に舞い上がる俺には聞こえなかった。

 のちに日ノ本高校が志望校で、なおかつ寮生活するつもりだと葛の葉に伝えると、苦虫を噛み潰したような表情を見せて、苦言を呈された。
 しかし既に言質は取ってあったので、俺は構わずに入学準備を進めていく。

 日ノ本高校が屋敷から通える距離にも関わらず、あえて寮生活を選んだのは、葛の葉への当て付けも少々ある。
 だがそれ以上に、たった5年間ではあったけど、ばあやとの思い出が色濃く残るこの屋敷には居たくない、というのが本音であった。

 そういえば俺が〝九条〟だということで、入学許可を巡って学内が揉めたという話を、葛の葉経由で耳に挟んだ。しかし一人の教師が勉学の自由を説き、上層部の反対を捻じ伏せてくれたらしい。

 何故九条が入学すると揉めるのかは分からないが、大方葛の葉絡みなのは、葛の葉の様子からも察しがつく。

 俺の入学許可が下りたのは、ひとえに上層部を説得してくれた教師のお陰なので、入学したあかつきには必ずお礼を言おう。
 そう考えて、俺は合格通知を大事に仕舞った。