保健室で会う? 何それ??
疑問符だらけの私の顔を見て、九条くんは優し気な笑みをますます深めて言葉を続ける。
「交換条件だよ。俺が生徒会に参加する代わりに、君にはここで俺と会ってほしい」
「はぁ!?」
まさかの発言に、私は目を三角にして叫ぶ。
「何それ!? ヤダよ! もし万が一、二人で居るところを九条くんのファンに見られたらどうすんの!? 私まだ死にたくないよ!!」
「ふーん。じゃあ生徒会への参加も文化祭の挨拶も無しだな。別にそれでも俺はいいよ? 困らないし」
「はぁっ……!?」
この男、なんという言い草だ。
さっきまでの〝話せば分かる良い人〟という私の九条くんへの評価は、一瞬で地に堕ちた。
「一度言った言葉を反故にする気?」
言外に最低だなという言葉を滲ませるが、九条くんは笑んだままその飄々とした態度を崩さない。
「どうとでも捉えてくれて構わない。でも君は俺に従わざるを得ない筈だ。君が〝雪女の半妖〟ってこと、教師も含めてここの学校関係者全員知らないんだろう?」
「っ……!」
「あははっ!」
思わず唇を噛み、真っ赤になってブルブルと震える私を見て、九条くんのとても楽しげに笑う。それはさながら悪鬼のような邪悪な笑みである。
くそぅ、人の足元見やがって……!
というかさっきまでの優しい微笑みはどこ行った!? ちょっとドキッとした私の乙女心を返せバカーーっ!!!
……そんな私の心の叫びは、誰にも届くことはなかった。
◇
ちなみにこの後生徒会室に戻った私は、九条くんに文化祭で挨拶をしてもらう約束を無事に取りつけたことを先生に報告する。
人の苦労も知らず、無邪気に大喜びする先生に若干イラっときたので、事前にこっそり生成した小さな氷を背中に入れてやった。
それに面白いくらい悲鳴上げて騒ぐ先生を見たことで、少しだけ胸がスッとしたことを追記しておく。