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7歳になり、本格的に妖狐一族当主となる為の勉強が始まった。
「素晴らしいです、神琴様。どの教科も全て満点だなんて。葛の葉様もさぞやお喜びになりますよ」
「そうかなぁ……」
ばあやはそう言うが、俺にはとてもそうは思えなかった。屋敷に来て早2年。その間に葛の葉と顔を合わせたことは、指で数える程しかない。
まるで俺の存在を無いもののように振る舞う反面、俺に当主となることを強要してくる。
それにそもそもの疑問があった。
「何故葛の葉は、ぼくを当主にしたいの? 葛の葉には本当の子どもはいないの?」
何故俺なのか。
実子がおらず優秀な本家筋の子どもを養子にしようとしたのだとしても、原因不明の病を患っているの時点で、俺では体調面で当主として不適格だ。
それなのに葛の葉は俺を切り捨てること決してなく、当主としての教養を学ばせようとする。
それが何故なのか、どうしても分からなかった。
「葛の葉様のお子様は、神琴様ただお一人です」
するとばあやが俺と目線を合わせ、言い聞かせるように俺の手を握る。
「ご当主となる資格のある者は、神琴様以外にはおりません。二度とそのようなことを口にしてはなりません」
「……うん」
目を潤ませて、今にも泣いてしまいそうなばあやの顔を見た俺は、彼女が何か隠している。そう気づきながらも、それ以上何も言えなくなってしまった。
