「――とにかく、ここでずっと話している訳にもいきませんし、そろそろ学校に帰りましょう」
そう言ってお馴染みの一反木綿姿だった木綿先生が、スッと私達の前に背中を向ける。これは乗れってことだ。
乗せてくれるのはあくまでも先生の好意だと言うのに、失礼にも全員ゲッという顔をした。もちろん私もである。
「わぁ~、わたし一反木綿さんに乗るの初めてです」
唯一、空飛ぶ一反木綿のヤバさを知らない朱音ちゃんだけが、無邪気な天使のように喜んでいた。この天使の笑顔がもうすぐ曇るかと思うと耐えられない。
そんな訳で、先生にはゆっくり安全安心に飛ぶよう脅して……。あ、いや、丁重にお願いしておいた。
「行きますよー」
木綿先生が私達を乗せて、空にふわりと浮かび上がる。お願いが効いたのか、今までが嘘のように快適だ。頬を撫でる風が柔らかい。なんだ、やれば出来るじゃないか。
「わぁ……! 夕陽がこんなに近い」
朱音ちゃんの歓声に前を見れば、赤く染まった空に浮かぶ夕陽が、地上から見るよりも鮮やかに目に映った。
しばし全員がこの幻想的な光景に見惚れていると、ふと夜鳥くんが「もうすぐ夏休みだな」と呟く。
「どうしたのさ雷護? らしくなく感傷的になって」
「らしくないは余計だ! なんつーか、夏休みに入るとしばらくは生徒会活動ねぇじゃん? だからこうして全員揃ったのに、少し寂しいっつーか……」
「あ……」
確かに夏休みが始まれば、1ヶ月半みんなと会えなくなる。私は早々にティダに里帰りするつもりだし、他のみんなだってそれぞれ過ごすだろう。そう思えば、なんだかしんみりとしてしまう。
不思議だ、たかが夏休みの間会えないだけなのに。
「ふふ、それだけボク達の中で生徒会の存在が大きくなったのかもね」
「そうだね。初めはただの生徒会メンバーでしかなかったのにね」
雨美くんの言葉に九条くんが頷く。うん、私も。
単に成績順で選ばれて、義務で活動していたに過ぎなかった私達。ただのメンバーが、いつしか仲間になった。
そしてきっと、そのきっかけを作ったのは――。
