「――それにしても」


 再会をひときしり喜んだ後、雨美くんが朱音ちゃんをちらりと意味深に見やる。


「まさか不知火(しらぬい)さんが、九条家の暗部だったなんてね。可愛い容姿にすっかり騙されちゃったよ」

「そうだぜ。暗部ってことは、あの狐面どもと同じくれぇ強いんだろ? んなちっこいのに、やるじゃねぇか」

「そもそも不知火さんからは、妖狐の気配を一切感じませんでしたからね。半妖……僕も初めてお会いしましたが、本当に不思議な存在ですね」


 木綿先生が朱音ちゃんを見つめてしみじみと言う。
 けど先生、実はとうの昔から私という半妖に会っているんですよ。……なんて、もちろん言えないけど。


「あはは……。正体を明かすことは、葛の葉様に禁じられていましたので。結果的にみなさんを騙す形になってしまって、ごめんなさい」

「えっ!? なのにみんなに言って大丈夫なの!?」


 驚いてそう朱音ちゃんに聞けば、当主から「今回のことは不問。後は好きにしろ」と伝言があったらしい。
 ついでに暗部の仕事もやらなくてよくなったそうな。あの当主、狭量なんだか、寛容なんだか……。


「朱音にも改めて礼を言う。まふゆを手助けしてくれて、本当にありがとう」


 そこで私達の会話を黙って聞いていた九条くんが、朱音ちゃんの前へと歩み出た。
 するとその瞬間、まるで火がついたように朱音ちゃんの顔は真っ赤に染まる。


「み、神琴様! そんな、勿体無いお言葉ですっ!! まふゆちゃんはわたしにとっても大切な友達。助けるのは当然のことですから!!」


 お馴染みの首振り人形のようにカクカクと頷きながらも、そう早口で(まく)し立てる。
 その姿はやっぱり何度見ても可愛いが、同時に以前感じた疑念がまたもや浮かんで、胸がモヤモヤしと出す。


「おい」


 と、そこで夜鳥くんが朱音ちゃんを見て首を傾げた。