当主に言われた通り地下室から出た私と九条くんは、すぐにあの関所のような門へと向う。
 どうやら思った以上に時間が経っていたようで、来た時にはまだ青かった空の色は、今やすっかり赤く染まっていた。


「わぁぁんっ!! 雪守さんに九条くん!! 二人共よくぞご無事で~っ!!」

「ま、オレは全然心配なんてしてなかったけどな!」

「とか言って雷護(らいご)、待っている間ず〜っとソワソワして、気が気じゃなかったじゃない」

「あ!?」

「ふふ。とにかくまふゆちゃんも神琴(みこと)様も、無事に戻って来てくれて本当によかった」


 既に門の前には木綿先生に夜鳥くん、それに雨美くんと朱音ちゃんが揃っており、笑顔で私達を出迎えてくれた。
 みんなと離れていた時間はそれほど長くなかった筈なのに、まるで随分と会っていなかった気がするのだから不思議だ。元気な姿を前にして、ようやく私の胸に巣食っていた不安も吹き飛んでいく。


「ところで九条様はともかく、なんで雪守ちゃんはあの狐面達と同じ格好してるの?」

「え」


 雨美くんに指摘されて、私は今の自分の姿を思い出す。そういえば朱音ちゃんと服を交換したままだったっけ。事情を掻い摘んでみんなに話せば、夜鳥くんが不機嫌そうに唸った。


「なんだそりゃ。ホントとんでもねぇな、九条家の当主。てめぇが気に食わねぇだけで客を襲わせたり、九条様を地下室に繋いだり、めちゃくちゃ過ぎんだろ」


 その言葉に九条くんが微妙な顔をする。


葛の葉(くずのは)は自分の意に沿わないことが大嫌いなんだ。そしてそれを解消する為には、手段は選ばない。……俺の母のせいで危険に晒してしまい、本当にすまない。でもみんなが来てくれて嬉しかった。ありがとう」


 九条くんはそう言うと、なんだか吹っ切れたように晴れやかな笑顔を見せた。するとそれを見たみんなも、照れくさそうにしながらも嬉しそうに笑い返す。

 そこでようやく、私は九条くんを奪還したら一番に言いたかった言葉を笑顔で伝えた。


「九条くん、改めておかえり!」

「ああ……、ただいま!」


 やっと私達は取り戻せたのだ。

 生徒会の仲間を。そして、いつもの日常を。