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「……なるほど、雪女の半妖か。通りで今まで気づかなかった訳だ。絶妙に人間の気配が君の妖力を覆い隠している」
「あはは、そうなの……」
九条くんは興味深そうに頷いているが、私は天井や壁に視線を漂わせ、ソワソワと落ち着かない。
天敵とも言える妖狐の九条くんとベッドに二人揃って腰掛けて、話すことは私のこと。なんなんだこの状況?
「さっき雪守さんが俺の額に手を当てた時、あれだけ引かなかった熱があっという間に引いて、ずっと陰っていた視界がクリアになった。もしかして雪女しか知らない特別な妖術でも使った?」
「え?」
九条くんに問われてキョトンとする。
さっきは無我夢中で九条くんの熱を氷の妖力で冷やそうとしたけど、でもそれだけだ。別に何か特別なことをしたつもりは無い。
「まさか。今までずっと正体を隠してきたし、妖力をまともに使ったのだって、さっきのが初めてだよ。ただ手のひらに氷の妖力を込めて、九条くんの熱を奪おうとしたの。体調が良くなったんなら、それが思いのほか上手くいったんだね」
「…………そう」
私の言葉に、九条くんはまた思案する。
自分の妖力のことを話すのはお母さん以外には初めてなので、言葉を慎重に選んで話した。
なにせ相手は妖怪の中でもトップクラスのエリート様なのだ。そんな人から私のような半妖は、どんな風に見えているのかと考えると恐ろし過ぎる。
「雪女に出会ったのは君が初めてだけど、あんなに一瞬で体が楽になるなんてすごく驚いた。雪守さんの妖力はとても強いんだね。本当にありがとう。正直治るまでずっとここで寝ていようかと考えていたくらい、最悪だったんだ。君のお陰で助かったよ」
「へ……?」
何を言われるかとハラハラが止まらなかった私だが、存外優しい言葉がかけられ驚きでいっぱいになる。思わず九条くんの顔を見れば、なんともまあ心臓に悪い柔らかな笑みを浮かべているではないか。
先程の恐ろしさから一転した優しい微笑みに、不覚にも私の心臓がドキリと音を立てた。
