「わっ、めちゃくちゃ急。踏み外したら洒落になんない」
そろりそろりと暗闇の中、壁に手をつきながら、私は階段を踏みしめるようにしてゆっくりと降りていく。
「あ」
と、しばらく降りた先に、微かな灯りが漏れているのが見えた。
ザワリと嫌な予感がしたが、逸る気持ちを胸に急いで灯りを目指して階段を降り終えると、廊下のような場合に出た。どうやら灯りは廊下の先の部屋から漏れているらしい。
「……っ」
瞬間、ぶるりと体が震えた。
ひんやりと地下特有の冷たさのせいもあるが、恐らく寒さとは違うこの場を支配する独特の陰鬱さを感じたからだろう。
「本当に、こんな場所に九条くんが……?」
じめじめして真っ暗で。立っているだけで不安になる場所。そんなところに閉じ込められて、九条くんは無事なんだろうか?
恐る恐る灯りの漏れた部屋へと近づく。しかし扉の前に立った瞬間、猛烈な熱さが体へと襲い掛かり、私は堪らず大声で叫んだ。
「あぁっつう!!? 何この部屋……!?」
先ほどの感じていた冷たさが一転し、部屋の中からは、まるで火口に居るかのような焼けついた空気を感じる。
「中に入る前からこんなに熱いとか、冗談でしょ……!? でも……」
扉を隔てた向こう側に感じる、この圧倒的な妖力。
間違いない。九条くんはこの部屋の中に居る。
「…………よし」
熱さに躊躇する自分を叱咤して、私は氷の妖力を全身にまとわせる。
そして朱音ちゃんから貰った鍵を取り出し扉を解錠し、高温に熱された扉をなんとか妖力を駆使して押し開いた。
すると、石造りの広い部屋の奥で見えたのは――。