「ごめんね。心配してくれてありがとう。俺の勘違いが悪いんだ。本当に気にしないで。それよりもさっきの君の――」
「ああっ! 大事なことを忘れてた!!」
ちょっとわざとらしいが、うわずった声で私は九条くんの言葉を遮る。
「あのね私、先生から言われて九条くんに頼みがあって保健室に来たんだよね。来月の文化祭の生徒会長の挨拶、先生が九条くんに絶対やってほしいって言ってたよ! あと生徒会にも参加してほしいって!」
このままここに居ては、九条くんの追及から逃れられない。私は笑顔でごり押して、手早く用件を伝える。
「確かに伝えたから、忘れずに来てね! ――って、痛ぁっ!?」
そしてその勢いのまま一気に保健室から脱出しようとしたところで、左肩を思いっきり掴まれた。痛い痛い痛い!!
「待った。まだ雪守さんからさっきの俺の質問の答えが聞けてない。君は何者? 答えるまで絶対に離さない」
「…………」
これは九条くんのファンなら「一生離さないで~!」とか、目をハートにして言いそうなシチュエーションなのだろうか?
だが生憎、私は九条くんのファンではない。有無を言わさぬ完璧な美貌に凝視され、ジワジワと体が溶けるんじゃないかと思う程冷や汗が止まらない。
「く、九条くん……」
逃がして? とばかりに可愛い笑顔を貼りつけて、九条くんを必殺上目遣いで見つめる。
しかし九条くんの神々しさ溢れるご尊顔の前には、付け焼き刃のぶりっ子など意味を無さず。
「うう……、分かったよ……」
結局私は観念するしかなかった。
